また、第12条において、防衛力強化資金の受け払いは歳出歳入外とされている。歳出歳入外とは、要するにすぐに出し入れできるお金ということであり、具体的には選挙の供託金や入札の保証金等がこれに当たるが、なぜ防衛力強化資金をそうしたものと同じ扱いにするのか。防衛費ではなく何か別の目的に使用しようとしているのではないかと思われてならない。

 そして、第14条、第2項に「令和五年度以降の各年度において、国有財産の処分による収入その他の租税収入以外の収入であって国会の議決を経た範囲に属するものは、防衛力整備計画対象経費の財源又は資金への繰入れの財源に充てるものとする」との規定があるが、これは端的に、本法案に規定された特別会計からの繰り入れや独法の積立金の一部の国庫返納のみならず、歳出改革と称した緊縮・予算削減によっても防衛費増額の財源を捻出するためのものである。しかも、防衛力強化資金の運用についてこれまで指摘してきたような問題があるところ、単なる予算削減の根拠ともなりかねない、極めて危険な規定となる可能性がある。

 なお、「租税収入以外の収入であって国会の議決を経た範囲に属するもの」については、これは国債発行による収入を指すとする見解もあるが、確かにこの表現は財務省が国債について使用するものではあるが、法的に意味が確定したものではなく、その前に「国有財産の処分による~」と付いていることも考えると、国債のみを指すと考えるのは少々お人よしすぎるように思われる。