なぜ、防衛省ではなく
財務省の管理なのか

 さて、先述の通り、本法案により防衛力強化資金が設置されるが、この資金は一般会計に置くので財務省管理とされている。防衛力強化のためのものなのだから、特別会計的に防衛省の管理とすべきではないかと思われるが、なぜそうなっているのかについては、本則の後ろに規定されている附則を見ると分かる。

 なんと附則の第4条において、財務省の所掌事務として「防衛力強化資金の管理に関すること」が追加されているのである。理解しづらいかもしれないが、各府省の所掌事務を新たに追加するというのは非常に重たい話、かつ他の府省からの反発もあり得る話であり、かつ、一度規定してしまうとそれをなくすことは、新たな行政機関の設置や、省庁再編のようなものでもなければあり得ない。したがって、既存の所掌事務の範囲内で「読む」ということがよく行われるのであるが、今回新たに所掌事務を追加するというのは、財務省がコントロールできる新たな「財布」を財務省のために設けるため、そして、財務省の手を離れてしまう特別会計的なものは是が非でも設けたくないという財務省の姑息な魂胆によるものなのではないか。

 さらに、第10条において、防衛力強化資金のお金を財政融資資金に預託することができることとされている。財政投融資資金とは、財投債の発行等により調達された資金を財源として、大規模・超長期プロジェクト等に融資を行う政策金融機関、官民ファンド等に融資を行うために設置されているもの。直近の防衛力強化のため、本法案によって新たな資金まで設置して特別会計や独法の積立金からお金を集めてきているというのに、超長期プロジェクトへの資金供給のための原資に充当するというのに等しく、本来の目的を逸脱しているとしか言いようがない。

 別の見方をすれば、要するに「余裕金を長期的に運用します」ということになるので、そもそも防衛力強化資金はおろか、本法案が不要ということまでいえてしまうのではないか。