鎌田さんはチェルノブイリやイラク、福島原発事故などの現地で医療支援をしてきた。時差がある海外は「帰ってきて、てんてこまいだった」と話し、眠るため、睡眠薬を使うようになったという。1種類で間に合わず、2種類になり、「まずいな」と思うようになった。
鎌田さんは支援活動の募金集めや、内科外来での診療、講演活動と多忙を極め、「交感神経が優位だった」と感じていた。
そこで鎌田さんは、食事や日光浴、速遅歩きといった運動など、生活習慣全般の改善に取り組んだ。その際に、いくつかのストレッチが効いた。「副交感神経を刺激した」とみている。
鎌田さんが快眠のために勧めるストレッチの一つが片鼻呼吸。一酸化窒素を体中に送り込み、血管を拡張させて自律神経のバランスを整えるという。右手の人さし指と中指で、左側の小鼻を押さえて鼻穴をふさぎ、右側の鼻穴だけで3秒間、息を吸い込む。次に、そのまま、右手の親指で右側の小鼻を押さえて鼻穴を両方ふさぎ、呼吸を3秒間、止める。
さらに、人さし指と中指だけを小鼻から離し、親指で小鼻の右側を押さえたまま、左の鼻穴だけで7秒間、息を吐き出す。吐き終わると、そのまま3秒かけて左側の鼻穴だけで息を吸い、また両鼻穴をふさいで3秒間、息を止める。今度は、右側の鼻穴だけで息を7秒間、吐き出す。
もう一つのお勧めは、股関節のストレッチ。寝る前に全身の疲れをとることが大事という。床にあぐらをかくように座り、両足の裏側を合わせる。両足を開いて、ひざを曲げ、足裏が合わさった状態で、ゆっくり両足を股へ近づけ、上体を倒して、できる範囲で前屈する。その姿勢を30秒間、保つようにする。
こうした効果もあり、鎌田さんは「睡眠薬がまったくいらなくなった」と話す。74歳のいま、医師の仕事や支援活動のほか、13本の連載や年間に何冊もの本の執筆、全国で講演活動もこなす。
多くの専門家が勧める快眠ストレッチ。自分に合ったものを見つけてみてはいかが。(本誌・浅井秀樹)