三菱・岩崎家の展示はかわいらしさと豪快さが共存

 続いて日本橋から丸の内に移動し、静嘉堂文庫美術館へ。こちらは明治生命館の1階だから、すぐに入館できた。三菱・岩崎家のタイトルは、「お雛さま~岩崎小彌太邸へようこそ」。

静嘉堂文庫美術館静嘉堂文庫美術館は丸の内・明治生命館の1階 Photo by Kenichi Tsuboi

 岩崎小彌太(1879~1945)は財閥三菱本社の4代目社長だ。初代の創業者は岩崎彌太郎(1835~85)、2代目が弟の彌之助(1851~1908)、3代目が彌太郎の長男・久彌(1865~1955)で、小彌太は彌之助の長男である。静嘉堂は彌之助、小彌太親子2代によるコレクションを収蔵している。

三菱の第4代社長岩崎小彌太三菱の第4代社長岩崎小彌太

 展覧会の順路の最初の部屋では、小彌太夫妻に日本画を教えていた前田青邨の絵画「獅子図」が出迎えてくれる。なお、獅子図は小彌太邸においても、玄関ホールに架けられていたそうだ。

 三井記念美術館の展示とは異なり、こちらは岩崎小彌太が孝子夫人のためにオーダーした人形と道具が中心だ。したがって小彌太邸へコレクションを見に行くという体裁になっている。昭和戦前に、京都の丸平大木人形店が製作した「内裏雛」「三人官女」「五人囃子」など、いずれも子ども仕様のかわいらしい人形だ。ミニチュアの琴や太鼓、笛、三味線、胡弓といった楽器もある。これほど大人が見ても楽しめるひな飾りは、めったにないだろう。

 人形や小道具はかわいらしい一方、それらを並べるひな壇は豪快そのもので、横に4間ほど、目測だがおよそ7メートルも広がっている。ただし、ひな壇は1段で、内裏雛などが多少、上げてある程度。なお、京都の丸平大木人形店は、江戸時代の明和年間(18世紀後半)に創業し、現在も営業している老舗である。

 両家とも、実に見応えのあるひな人形類を残してくれたものだ。早春の日本橋や丸の内を散歩しがてら訪れてみてはいかがだろう。