尹錫悦大統領が目指すのは
首脳会談による日韓関係の全面的修復

 尹錫悦大統領が三一節の演説で日本との協力を前面に打ち出したことは、早期に日韓首脳会談を開催し、日韓を緊密な協力関係に引き上げたいとの思惑がにじみ出たものと考えられる。

 日韓首脳会談は、徴用工問題の解決にめどがついた時点で開催されるだろう。

 5月にはG7広島サミットがあり、北朝鮮の核問題が討議されるので尹錫悦大統領も招かれ、日米韓首脳会談が開かれると思われる。したがって尹錫悦大統領としては、G7以前に日本を訪問、徴用工問題にけりをつけるシナリオを描いていると思われる。

 韓国国内では、2月28日に朴振(パク・チン)外相が元徴用工の遺族と面談、これまでの日韓の協議について説明した。遺族からは肯定的・否定的双方の意見が聞かれたという。

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 しかし、2月28日は個人面談でなく、集団での面会だった。それでは、韓国企業などから集められたお金を受け取って終わりにしたいと考える元徴用工とその遺族の本音は聞けないだろう。

 前述の通り、全経連が若者を対象に行った調査でも、政府の解決策について52.4%が日韓関係に肯定的な影響があると評価している。韓国政府としても、元徴用工の手前、「ぎりぎりまで交渉した」との体裁を繕う必要があるが、解決策の最終的とりまとめに近づいているように思う。

 今年の3・1独立運動記念日は、新しい日韓関係の創造に向けた大きなステップだったように思われる。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)