売上を減らしたら、利益が1億円アップした会社をご存じだろうか?
「いずみホールディングス」は、食品流通事業とB to Bマネープラットフォーム事業を展開する企業グループ。食品流通事業6社は、水産・畜産・農産商品を全国の飲食店、量販店、卸売市場に販売。また、B to Bマネープラットフォーム事業では「oneplat」というサービスを展開している。同社は近年、経営改革を進め、利益を1億円アップさせた。
その秘密は、ベストセラーとなっている、木下勝寿(北の達人コーポレーション社長)著『売上最小化、利益最大化の法則』と『時間最短化、成果最大化の法則』の掛け算にあったという。
『売上最小化』は「2021年 スタートアップ・ベンチャー業界人が選ぶビジネス書大賞」を受賞、『時間最短化』は、「がっちりマンデー!!」のツイッターで、「ニトリ」似鳥会長と「食べチョク」秋元代表が「2022年に読んだオススメ本3選」に同時選抜された本だ。
今回、その掛け算の秘密をいずみホールディングスの泉卓真代表が初めてメディアに語った。5回目は「年間1億円の利益改善に成功した勉強会のやり方」に迫ろう。(構成・橋本淳司)

書籍Photo: Adobe Stock

取り入れた教材の9割は本

――いずみホールディングスでは、『売上最小化、利益最大化の法則』と『時間最短化、成果最大化の法則』を社内で徹底研究したそうですが、これまでも本によって業務改善を図ったケースはあったのでしょうか?

 これまで当社が取り入れた教材の9割は書籍です。

 何冊かの本については社内勉強会を開き、業務改善に活用しました。

 その成功体験があったので、この2冊も「そうすべきだ」と直感しました。

 本気で取り組めば、これまで以上に成果が出ると思ったのです。

――2冊をグループ社員、全員に配ったのですか

 いえ、『時間最短化、成果最大化の法則』は全社員に配り、『売上最小化、利益最大化の法則』は各事業会社の社長と幹部に配りました。

 この2冊の本は、明確に役割が違うと考えています。

 まず、『売上最小化、利益最大化の法則』は社内の哲学を変える本です。

 基本は事業部長クラス以上が内容を完全に理解し、会社のしくみを再構築していく目的で使います。

 一方、『時間最短化、成果最大化の法則』は、現場の人が使いこなして成果を上げていく本です。

 『売上最小化』を使って会社の方針を決め、『時間最短化』を全員で読み、最大限の成果を上げていきます。

 全員が戦略構築の役割を担ってしまうと、組織は機能しなくなるので、現場の人たちには必要ない情報は入れないようにしました。

「○ページの考え方をうちで取り入れたらこうなるんじゃないの?」

――『売上最小化、利益最大化の法則』の“幹部向け勉強会”はどのように行われたのですか?

 当グループは業種的に水曜、日曜が休みで土曜日は営業日です。

 そのため、毎週土曜正午から夕方4時まで経営者ミーティングを行いました。

 この中で本の流れに沿いながら、

そもそも売上が大事なのか、利益が大事なのか」

 から話し合いました。

「売上は上がっても利益が上がらない理由」
「同じ利益なら売上は少ないほうがいい」
売上が少ないほうが経営が圧倒的に安定する理由」
「売上10倍は『リスク10倍』を意味する」

 などの項目を一つひとつ読んで議論しました。

 次に、利益の管理方法を学びました。

「売上は高いが利益はい商品」
「売上は低いが利益はい商品」

 の見分け方について、自社の場合に置き換えて考えました。

 社内システムの改修も、この時点でかなり行われました。

 本を広げつつ、

「○ページの考え方をうちで取り入れたらこうなるんじゃないの」

 という議論をさかんにやりましたね。

本の内容を次々に実践!

――『時間最短化、成果最大化の法則』についてはどうでしょうか?

 こちらは社員全員に読み込んでもらい、ミーティングなどで活用しました。

すぐやる人の思考アルゴリズム」
必ず目標達成する人の思考アルゴリズム」
ノーミス人間になる思考アルゴリズム」

 などを読んだらすぐに実践していきました。

――なぜ、一方だけをやるのではなく、『売上最小化』と『時間最短化』の合わせ技がいいのでしょうか?

 幹部と現場メンバーでは仕事内容の優先順位が違うので、幹部は両方読み、現場のメンバーは『時間最短化』だけ読んだのですが、この2冊はそもそも親和性が高いと思っています。

 最初にやったのは業務時間の最短化です。

 さらに、利益に直結しない売り先、行動、業務フローを全部見直しました。

 つまり、仕事の哲学を『売上最小化』で学び、それをレベル高く運用するコツを『時間最短化』で学びました。

 現場では、『売上最小化』で考えてつくり込んだしくみを、どう運用するかが大事です。

 私が社長を務めているグループ内の事業会社「Oneplat」は、B to Bマネープラットフォーム事業なので、木下社長の教えが、ほぼそのまま使えます。

 そこで幹部に『売上最小化』を、全社員に『時間最短化』を配布し、何かあるたびに本を持参してディカッションしています。まだ新しい成長中の会社なので、本の内容を中心に運営を行っています。ぜひ木下さんの本を読んでみてください。

【効果実証済】年間1億円、利益アップした「勉強会」のやり方
【泉卓真氏略歴】
株式会社いずみホールディングス 代表取締役社長。
複数の飲食チェーン店勤務を経て2004年に海産物専門卸のいずみを創業。その後、畜産物卸や農産物卸にも参入し、2012年にいずみホールディングスを設立。2019年、株式会社Oneplatを設立し、代表取締役社長に就任。SBIや三菱UFJ、政府系の官民ファンドなどから総額10億5000万円の投資を集め、銀行をはじめとした金融機関と提携し、日本初のスキームで構築された、BtoBマネープラットフォームを構築。

(本稿では『時間最短化、成果最大化の法則』と『売上最小化、利益最大化の法則』をフル活用し、大きな成果を上げた事例を紹介しています)