食事からビタミンDを摂取することの重要性
研究対象は、1990年と1993年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、茨城県水戸、東京都葛飾区、新潟県長岡、大阪府吹田、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古など11の保健所管内に居住していた40~69歳の成人のうち、研究開始5年後の食事調査に回答し、かつ、がんや循環器疾患などに罹患していなかった9万3,685人(女性54.1%)。2018年12月まで追跡して、食事調査時のビタミンD摂取量と追跡期間中の死亡リスクとの関連を解析した。
平均18.9年(176万8,746人年)の追跡で、2万2,630人が死亡。年齢、性別、研究地域で調整後、ビタミンD摂取量の第1五分位群(下位20%)に比べて、第2~第5五分位群は全死亡のハザード比が有意に低かった(傾向性P=0.021)。ただし、調整因子にBMI、喫煙・飲酒・運動習慣、糖尿病や高血圧の既往、摂取エネルギー量、カルシウムやオメガ3脂肪酸の摂取量、緑茶・コーヒー・サプリメントの摂取、職業などを加えると、有意性が消失した(同0.29)。
次に、事前に作成した解析計画に沿って、性別や居住地の緯度などで層別化したサブグループ解析を実施。その結果、女性はビタミンD摂取量が多いほど全死亡リスクが低いという有意な関連のあることが明らかになった(傾向性P=0.001)。また、高緯度地域の居住者やカルシウム摂取量が中央値以上の人、高血圧の既往のある人では、摂取量の第1五分位群に比べて第2~第5五分位群は全死亡ハザード比が有意に低かった(傾向性P値は同順に、0.085、0.19、0.058)。
続いて死因に着目すると、ビタミンD摂取量が多いほど脳梗塞による死亡のリスクが低いという有意な関連が認められ(傾向性P=0.029)、肺炎も有意に近い傾向が認められた(同0.09)。脳梗塞以外の脳・心血管疾患やがんによる死亡リスクについては、ビタミンD摂取量との有意な関連が見られなかった。
これらの結果を基に著者らは、「日光にあまり当たらない人や高緯度地域に住む人は食事からのビタミンD摂取を増やすことで、早期死亡リスクが抑制される可能性がある」と結論付けている。なお、ビタミンDを多く含む食品として、青魚やキノコなどが挙げられる。
著者の1人である国立国際医療研究センター疫学・予防研究部の溝上哲也氏は、「日光を浴びる機会が少ない現代の生活様式がコロナ禍で加速しており、食事からビタミンDを摂取することの重要性が高まっている」とコメントしている。(HealthDay News 2023年3月6日)
Abstract/Full Text
https://link.springer.com/article/10.1007/s10654-023-00968-8
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