経済的に恵まれない母子家庭に育ち、高校・大学は奨学金を借りて卒業。そのため、1000万円に迫る“奨学金という名の借金”を背負うことになった。そこで、郷里に母を残して上京、東京国税局の国税専門官となった。配属を希望したのは、相続税調査部門。「どうすればお金に悩まされずに済むのだろう?」と考え「富裕層のことを知れば、なにかしらの答えを得られるのではないか?」と思い至ったからだった。国税職員のなかでも富裕層が相手となる相続税を担当するのは、たった1割ほど。情報が表に出てくることはほとんどない。10年ほど携わった相続税調査で、日本トップクラスの“富裕層のリアル”に触れた『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者が、富裕層に学んだ一生お金に困らない29の習慣を初公開する!

【元国税専門官が明かす】“隠し財産”を探した税務職員が見つけた意外なモノPhoto: Adobe Stock

なぜ先輩は
意外な時間に帰ってきたのか?

【前回】からの続き 「富裕層はギャンブルをしない」というのが私の基本的な認識ですが、もちろん例外もあります。あるとき、相続税調査に出かけた先輩が、午後の早い時間帯に税務署に帰ってきたことがありました。

相続税調査は基本的に午前も午後も1日たっぷり時間をかけて行うので、気になってその先輩に「どうしたんですか?」と尋ねたところ、「今回はハズレだった」といいます。先輩が調査していた案件は、生前の収入などに比べて申告された相続財産があまりに少なく、“隠し財産”が見込まれるものでした。

“隠し財産”を探した
税務職員が見つけたモノ

ところが、意気込んで相続税調査のため自宅に出向いたところ、残された奥さんから聞かされたのは、「亡くなった夫は競輪にハマってしまって……」という愚痴だったそうなのです。仕事を引退した後、老後の趣味として競輪をやってみたら、のめり込んでしまったとのこと。

そうした説明をして奥さんが見せたのが、競輪のハズレ券が詰まった袋だったそうです。その袋のなかから大量のハズレ券をとり出して、負けた金額を電卓でざっと計算した先輩職員は、「それはご苦労されましたね……」といって引き上げるしかなかったほどの金額だったそうなのです。

ギャンブルでお金を失っても
証拠を残す

このようにギャンブルで資産を大きく減らすような事態は絶対に避けたいところですが、もし実際に起きてしまったら、あの奥さんのように「ギャンブルで負けた」という証拠を残しておかなくてはいけません。

なぜなら、国勢調査官は「もっと財産があるはず」という想定のもと相続税調査をしているからです。この意味から、ギャンブルなどで財産が失われているのであれば、その事実を示すことが求められます。【次回に続く】

※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。