虎視眈々と4選と台湾統一を目指す習近平

 このところ、筆者を含め、国民の多くの目がWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での日本代表の戦いに注がれてきた。国際大会は国のメンツを懸けた戦いだ。熱くなるのは当然だ。

 ただ、その一方で、国際社会では、民主主義国家対専制主義国家の駆け引き、ウォーゲームともいうべき動きが激しくなっていることも忘れてはならない。

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領やドイツのショルツ首相が来日し、岸田文雄首相はインドへと飛んだ。いずれも民主主義国家間での連携を強化するのが目的だ。

 対する中国も、全人代で習近平総書記が国家主席としても3選を果たし、新たな首相に側近の李強氏を、そして次期国家主席への登竜門とされる副主席には、すでに最高指導部を外れ、「一丁上がり」状態となっていた韓正氏を起用した。

 重要ポストをイエスマンだけで固め、有力な後継者も作らなかったことは、習近平総書記が、3選どころか4選を視野に動き始めたことを意味している。

書影『日本有事』(集英社インターナショナル新書)『日本有事』(集英社インターナショナル新書)
清水克彦 著

 習近平総書記は、外交でも着々と布石を打っている。習近平総書記自らロシアを訪問。他にも、北京でイランのライシ大統領と会談したり、サウジアラビアとイランの外交正常化を仲介したりと、専制主義国家間の連携を強化している。これらは、台湾統一という次のステップを見据えた動きと考えていい。

「防衛力強化よりも、まず、中国を台湾統一に動けないようにする外交努力を」

 このように語るのはたやすい。とはいえ、外交努力だけでは効き目がないことはウクライナ戦争の惨状が語っている。

 石垣市中心部にあるホテルの一室で、「中国が動きだすまで2年程度ある。あくまでウォーゲームの間に、政府と県、各自治体は、住民の理解を得る努力を重ね、避難訓練を急ぐ必要がある」…そんな思いを込めながらパソコンと向き合っている。

(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師 清水克彦)