売上を減らしたら、利益が1億円アップした会社をご存じだろうか?
「いずみホールディングス」は、食品流通事業とB to Bマネープラットフォーム事業を展開する企業グループ。食品流通事業6社は、水産・畜産・農産商品を全国の飲食店、量販店、卸売市場に販売。また、B to Bマネープラットフォーム事業では「oneplat」というサービスを展開している。同社は近年、経営改革を進め、利益を1億円アップさせた。
その秘密は、ベストセラーとなっている、木下勝寿(北の達人コーポレーション社長)著『売上最小化、利益最大化の法則』と『時間最短化、成果最大化の法則』の掛け算にあったという。
『売上最小化』は「2021年 スタートアップ・ベンチャー業界人が選ぶビジネス書大賞」を受賞、『時間最短化』は、「がっちりマンデー!!」のツイッターで、「ニトリ」似鳥会長と「食べチョク」秋元代表が「2022年に読んだオススメ本3選」に同時選抜された本だ。
今回、その掛け算の秘密をいずみホールディングスの泉卓真代表が初めてメディアに語った。9回目は「赤字につながる売上を一発で見抜く裏ワザ」について迫る。(構成・橋本淳司)

売上Photo: Adobe Stock

第1段階は全幹部で5段階利益管理を共有

――いずみホールディングスでは『売上最小化、利益最大化の法則』で紹介されている「5段階利益管理」を各社に導入しているそうですね。

 うまくいく導入法について教えていただけますか?

 この本を読んで売上には利益につながる売上と、赤字につながる売上があると、初めて明確に意識しました。

 そこで「隠れたコスト」を見える化し、会社を利益体質になるツールである「5段階利益管理」を徹底的に勉強しました。

【1億円利益増のヒケツ】“赤字につながる売上”を一発で見抜く裏ワザ

「5段階利益管理」は、利益を商品・サービスごとに次の5段階で見える化します。

【利益1】売上総利益(粗利)
【利益2】純粗利
(造語)
【利益3】販売利益(造語)
【利益4】ABC利益
【利益5】商品ごと営業利益

「5段階利益管理」では粗利から「注文連動費」(注文ごとに必ず発生するコスト。カード決済手数料、送料、梱包資材等)、「販促費」(広告、営業の人件費など受注を獲得するのにかかったコスト)、「ABC」(商品ごとの人件費等)、「運営費」(家賃や間接業務の人件費等)を順番に差し引き、「商品ごと営業利益」を導き出します。

 まず、幹部(当グループの場合、ホールディングスの取締役と事業会社の社長)で時間をかけて「5段階利益管理」を研究し、次のステップとして、私たちなりの「5段階利益管理表」をつくりました。

「5段階利益管理表」を業務フローに落とす

――自社なりの「5段階利益管理表」をつくるコツのようなものはあるのでしょうか。

「5段階利益管理」を見て、「すごい情報を得た」と思いながらも、「注文連動費」「販促費」「ABC」「運営費」などの費用項目がそのまま自社に当てはまらないと、「うちでは使えない」となってしまう人もいると聞きます。

 損益計算書では、売上から販管費、営業外費用などを差し引き、営業利益、経常利益などを算出します。

 ですが、損益計算書で考えると、業務の動きとお金の流れが違うため、少しわかりにくいかもしれません。

 そこで、「5段階利益管理表」を業務フローに落とすと面白いことができます。

 私は貧乏性なので、手に入れた情報は徹底的に使いこなしたいんです。

 質の高い情報ならなおさらです。

 そこで、うちのグループにとっての「注文連動費」「販促費」「ABC」「運営費」って何だろうと考えました。

 お客様と出会ってから入金までに、さまざまな業務がありますね。

 お客様と出会うための工程(工数)→営業活動(交渉などの工数)→契約→受注・発注(お客様や商品による工数)→ピッキング(お客様や商品による工数)→商品配送(お客様や商品による工数)→お客様対応(お客様や商品による工数)→日々の納品書や請求書(経理の工数)→入金(確認工数やお客様によって対応する工数)。

 この業務プロセスの工数も重要コストと見定め、「注文連動費」「販促費」「ABC」「運営費」の欄に自分たちなりに言葉お変えて入れていくのです。

――これはグループ内各社によっても違ってくると思うんですが。

 おっしゃるとおりです。

 そこで会社ごとにシステムを変えました。

 会社ごとに、「売り先」「売り物」「売り方」に着目したのです。

――そのように分類しようと思った理由は何ですか。

 まず、「売り先」に必ず数段階の利益管理が存在します。

 たとえば、スーパーに売る場合と飲食店に売る場合は違いますし、法人と個人でも違います。

 ということは、売り先ごとに管理しなければいけない。

売り物」も同じです。

 たとえば、法人と個人、スーパーと飲食店では、売る物、売れる物、売りたい物が違います。そこでそれぞれ個別に管理します。

売り方」も、自社サイトで売るのか、アマゾンや楽天で売るのか、営業担当が商談して売るかで原価やコストが違います。

 それで全部別々に管理します。

 市販のシステムを使うと70点でも、自社でシステムをカスタマイズすると90点になります。

 ビジネスでは70点と90点の差が異常に大きい。

 そこで自社の管理を最高レベルにするために、システムは自社で構築し、これまでも各社でさまざまなカスタマイズを実行してきました。

「5段階利益管理表」を導入し運用する

――導入のコツは何でしょうか。

 まずは、エクセルで始めてみることではないでしょうか。

 納品書や請求書のDXを実現させる新しい電子化サービス「oneplat」の「5段階利益管理」は『売上最小化、利益最大化の法則』に近いですが、その他の6社の「5段階利益管理」は少しずつカスタマイズする必要がありました。

 そこで、はじめは「5段階利益管理表」をエクセルでつくりました。

 費用項目について試行錯誤するためです。

「oneplat」は、今でもエクセルでやっています。

 最終的に管理方法が固まったらシステム化します。

――では、運用のコツは?

 頻繁に見る「しくみ」をつくることです。

 LINEはメッセージが来ると、「トーク」のアイコンに1とか2という数字がつきます。

 するとほぼ自動的にクリックしてメッセージを見てしまいます。

 それと同じで、当社の社員もパソコンを開けた瞬間に、自分の売り先ごと、売っている商品ごとに営業利益がわかると、気づきの回数が増えるので、改善回数も増えます。

 情緒的な努力ではなく、自動的にしくみで運用できるようにするには、会社ごとに合うシステムを開発して導入するのが一番だと思っています。

 その面でも、今すぐ木下社長の本を読んで、実践いただけたらと思います。

【1億円利益増のヒケツ】“赤字につながる売上”を一発で見抜く裏ワザ
【泉卓真氏略歴】
株式会社いずみホールディングス 代表取締役社長。
複数の飲食チェーン店勤務を経て2004年に海産物専門卸のいずみを創業。その後、畜産物卸や農産物卸にも参入し、2012年にいずみホールディングスを設立。2019年、株式会社Oneplatを設立し、代表取締役社長に就任。SBIや三菱UFJ、政府系の官民ファンドなどから総額10億5000万円の投資を集め、銀行をはじめとした金融機関と提携し、日本初のスキームで構築された、BtoBマネープラットフォームを構築。

(本稿では『時間最短化、成果最大化の法則』と『売上最小化、利益最大化の法則』をフル活用し、大きな成果を上げた事例を紹介しています)