「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」と断言し、その悩みに明確な答えを与えてくれる「アドラー心理学」。日本では無名に近かったこの心理学を分かりやすく解説し、世界累計1000万部超のベストセラーとなっているのが『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の“勇気シリーズ”です。
この連載では、『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の著者である岸見一郎氏と古賀史健氏が、アドラー心理学の教えに基づいて、皆さんから寄せられたさまざまな悩みにお答えします。
今回は、職場の同僚と相性が悪いことに悩む女性からのご相談。岸見氏と古賀氏がアドラー心理学流に、「仕事と人間関係」についてどう考えればよいかズバリ回答します。(構成/水沢環)

『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の著者があなたの悩みに答えますイラスト:羽賀翔一

今回のご相談

 今の仕事は好きで退職まで続けたいと考えています。しかし職場に一人だけどうしても合わない人がいます。それはアドラー心理学では「課題の分離」として考えるべきことでしょうか?(50代・女性)

「アドラー心理学流」回答

古賀史健 そうですね、アドラー心理学には「課題の分離」という考え方があります。これはものすごく簡単に言うと、自分の人生において変えられるものと変えられないもの、この二つをしっかり見極めるということです。たとえば自分の生まれや身長なんかはどうやっても変えられないですよね。そういうことに悩んでも意味がありません。

「自分に変えられるもの」と「変えられないもの」をしっかりと見極め、変えられるものにフォーカスする。それを積極的に変えていく努力をする。そういう発想が「課題の分離」です。

 そのうえでご質問に戻ると、対人関係としての課題の分離よりも先に、「仕事」と「職場」を分離させて考えるのがよいのかなと思いました。もしも自分にとって大事なものが「仕事」なのであれば、職場に多少の問題があっても目をつぶって「仕事」にフォーカスする。一方、もしも自分にとって「職場の環境」が大事で、「仕事」の内容は二の次なのであれば、もっと良い環境を探して転職するという手もあるでしょう。

 自分のなかで「仕事」が大事なのか、「職場」が大事なのか。その切り分けをして、どちらを変えるかを考えるのが先決かと思いました。

岸見一郎 仕事をする上で職場の人と友だちになる必要はありません。「仕事の内容」と「同僚と気が合うか合わないか」を混ぜて考えないことは非常に大事です。仕事をする力や才能があるのに、対人関係を理由に仕事を辞めてしまうのはもったいないことです。

 もうひとつ大切なのは、その人と上手くいかなかったからといって、「自分はこの人とは気が合わない」と思い込まないことです。そう考えてしまうと、あらゆることが「気が合わない」ことの証拠になってしまいます。そういう思い込みは外す必要があります。

 長く一緒に仕事をしている相手であっても、毎日「この人とは今日初めて会う」くらいの気持ちで仕事をしてみてください。まずは自分がそういう努力をするしかないと思います。あなたが相手を変えることは基本的にはできないのです。

(次回もお楽しみに)