職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。

【即答できないとヤバい】あなたの職場の「備品」は誰が補充しているか?Photo: Adobe Stock

「小さな違い」に気づけるようになる方法

 1つずつ「気づかいの壁」を越えることができるようになってくると、通常との小さな違いにも気づけるようになります。

「○○さんが朝から覇気がない(いつもは誰よりも元気に出社してくるのに)」
「会議の空気が重くなった(先週まではたくさん意見が出ていたのに)」

 など、通常の状態を知っているからこそ、小さな違いをキャッチできます。
 すると、「どうしたの?」と声をかけたり、会議での質問の仕方を変えてみたりすることができます。

 さて、ここで1つ質問があります。

 あなたは、「会社の備品を誰が補充しているか」を知っていますか?

 パッとすぐに思い浮かびますか。
 その人の名前がすぐに言えますか。

 いかがでしょうか。
 他にも、社内の細々とした仕事はたくさんあります。

● 観葉植物には誰が水を与えているのか
● 出社したときに、なぜちゃんとブラインドが上がっているのか
● なぜ、コピー用紙が切れないのか

 かつて、会社員時代の最初の頃の私もそれらのことを気にも留めていませんでした。

 しかし、あるとき、夕方の給湯室で加湿器を洗っている他チームの方を見かけて驚いたのです。
 声をかけると、「好きでやってるんですよ~」と笑顔で返されました。

 オフィスの快適な状態が身近なメンバーの厚意によって保たれていることを知り、それまでの自分を反省しました。

日々の通常に「感謝」を伝える

 小さな違いに気づけるかどうかには、個人差があります。

 とはいえ、日々の職場環境の「通常を知っておくこと」「誰が何をやっているかを把握しておくこと」は、誰にでもできることです。
 見ていたつもりでも、意識しないと認識できないことはたくさんあります。

 そして、その通常の状態を維持してくれている人に感謝して、タイミングを見つけて、

「いつもありがとう。何かあったらいつでも声をかけてね」

 ということを伝えてみましょう。

 私のリクルート時代の上司がよく言っていたのが、「半径5メートルの人を幸せにすることが大事だ」ということでした。
 まさに、「見ていてくれた」「知っていてくれた」を伝えることこそが、その人のその日を幸せにするのだろうと思います。

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。