「終電ギリギリまで残業しているのに仕事が終わらない人」が、「必ず定時で帰るのに成績No.1の人」に変わるためには、どうしたらいいのだろう?
そんな悩みへの実践的な解決策が、『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』では見事に解説されている。
著者は、北の達人コーポレーション(東証プライム上場)社長・木下勝寿氏だ。
本書はベストセラーとなっている、多くの経営者からも評判の一冊だ。TBSテレビ系『がっちりマンデー!!』のSNSでは「食べチョク」秋元里奈代表が、「2022年に読んだオススメ本3選」として本書を紹介した。木下氏は、秋元代表にとって尊敬する経営者の一人だという。
そこで本連載では、多くのビジネス書を読み、経営の勉強をしてきたという秋元代表に、『時間最短化・成果最大化の法則』の活用術を教えてもらうことに。自身も著書『365日 #Tシャツ起業家』でその仕事論を綴った秋元代表は、先輩経営者の思考術をどう読み解いたのか。連載8回目は、「向いていないのにリーダーになってしまったときの対処法」を聞いた。(構成・川代紗生)

「消去法でリーダーになってしまった人」でもうまくいく、たった1つの法則

会社員のほうが向いているのに
あえて起業した理由

──25歳でIT企業を退職し、その後「食べチョク」をリリース。「会社員」から「創業者」「代表取締役社長」へと肩書きが変わる過程で、多くの葛藤があったのではないかと思います。チームを引っ張っていく立場になり、挫折などはありませんでしたか?

秋元里奈(以下、秋元):起業するにあたり、さまざまな経営者にお話を聞いたり、本を読んだり、ビジネスのハウツーを学んできました。

 そこで感じたのは、起業家には、大きく分けて2つのタイプがいる、ということです。

 1つは、会社員的な働き方が向いておらず、「自分で何かをやってみたい」という強い意思があって起業したタイプ。

 もう1つは、会社員的な働き方の方が向いているけど、やりたいことがあるから、手段として起業したタイプ。

 私の場合は、明らかに後者でした。

 前職のDeNAでの仕事も好きだったし、チームをぐいぐい引っ張っていく「カリスマ性」みたいなものもなかった。

 本来ならば、会社員のほうが性に合っていたと思います。

 でも、「日本の農業をよくしていきたい」という目標に出会ってからは、この情熱こそ、私が人生で大切にするべきものではないか、と思うようになりました。

 会社での仕事にも、夢中になれてはいたけれど、自分の人生をかけてでもやりたいかというと、そうではなかったと思います。

「プレイヤーとして優秀な人」と
「リーダーとして優秀な人」の違い

秋元:このようにして私は起業を決意したのですが、マネジメント経験もなく、メンバーとのコミュニケーションの取り方に迷う時期もありました。

 メディアに出ている、カリスマ性のあるリーダーと自分を比べては、「私もああならなくちゃ」と焦ったりしたことも……。

時間最短化・成果最大化の法則』を読んでいたときに、そんなふうに葛藤していた頃のことを思い出しました。

 なかでも、「後天的リーダーの法則」は、当時の私の悩みにぴったりの内容だと思います。

 ここでは、リーダーの役割の違いについて、こんなことが書いてあります。

エースは実務レベルで一番仕事ができる人、キャプテンはリーダーとしてメンバーを引っ張っていく人、監督は作戦を立てメンバーの人選を行う人だ。
経営者や上級管理職は監督だ。
中間管理職やリーダーは、キャプテンとして監督の立てた作戦を、メンバーを引っ張りながら実現していく。
エースは自分で成果を出す。時には後輩を指導したりサポートしたりする。
それぞれ適性が違うから、そもそもエースからキャプテン、キャプテンから監督と出世していくのはおかしい。(中略)
日本では、多くの会社でエースがそのままキャプテンになるが、うまくいかないことが多い。エースとキャプテンは別の能力が必要だからだ。(P249~250)

 私も会社員時代、エース級の人材とまではいえないけれど、プレイヤーとして結果を出すための努力は必死にやってきました。

 けれど、起業してから、プレイヤーとして優秀だからといって、マネジメントができるわけじゃないと、痛感しました。

先頭に立たない
「後天的リーダー」のあり方

──今の時期、マネジメント経験がないのにリーダーになってしまい、どう振る舞えばいいのかわからず、困惑している人も多いと思いますが、おすすめの方法があれば教えてください。

秋元:そういうときこそ、「後天的リーダー」のあり方を学べるといいかもしれません。

 木下社長の言葉で、

 後天的リーダーがやるべきなのは「俺についてこい」ではなく「縁の下の力持ち」だ、

 というものがあります。

 自分が先頭に立つのではなく、メンバーが取りこぼしたものを黙って拾う。

 メンバーが嫌がることを率先して行う。

 メンバーの責任を自分が負う。

 はじめは目立たなくとも、行動を積み重ねるうちに、

「あの人がいるからチームが回っているんだ」

 と周りが気がつき始めるものだ、と。

 まさに、思いがけずマネージャーになってしまった人などにとっては、この考え方はとても大切だと思います。

 周りを巻き込み、ぐいぐい引っ張っていく力がなくとも、仕事を丁寧にこなしていればマネジメントはできる。

 そう励ましてもらえるような内容だと思います。

 この春、配置換えなどで悩んでいる人にとっては特にいいかもしれませんね!