もちろん、お酒と女給が目当てのカフェーとは一線を画し、コーヒーと軽食だけを扱う本格店もありました。1930年頃にはさらにカフェーが増え、サービスがエスカレートしていくうちに、「特殊喫茶」「純喫茶」という区分ができます。お酒と女給のサービスメインのカフェーは「特殊喫茶」、純粋にコーヒーを楽しむカフェが「純喫茶」と呼ばれるようになります。

 いまでは「純喫茶」という言葉だけが残り、「特殊喫茶」という言葉は死語になっていますが、メイドカフェは現代に残る特殊喫茶と言ってもいいかもしれません。

80年代の喫茶店数は
現在のコンビニの約3倍

 日本史上最大の喫茶店ブームは1970年代に起きました。脱サラして喫茶店を開業する人が増え、家族・個人経営の喫茶店が乱立します。1981年にはなんと15万軒を超えるほどにもなりました。2022年におけるコンビニの店舗数が5万7000くらいですから、15万という数字がどれだけすごいかわかります。

 それだけの数の喫茶店があれば、当然ながら競争になります。他店と差別化するため、店独自の内装やコーヒーの品質にも力を入れるようになりました。

 実はこれがちょっとおもしろいところ。それまで、歴史的に見るとコーヒーハウスやカフェは人々の交流の場としての機能が重視され、コーヒー自体の美味しさは二の次だったのです。しかし、日本の喫茶店ブームでは 「美味しいコーヒーを淹れること」に注力する店が増えたわけです。

 1990年代には新たな「カフェブーム」が起こりました。昭和の喫茶店とはまた違う、欧米のカフェを模したオープンカフェが流行します。テレビや雑誌でカフェ特集が組まれ、おしゃれなカフェが人気になりました。話題のカフェを調べて出かける「カフェめぐり」という言葉も生まれ、カフェめぐりのための本や雑誌も発行されるようになりました。

 象徴的なのは、1996年、アメリカはシアトルからの「スターバックス」の上陸です。1号店は銀座の松屋通りにオープンしました。これにより、エスプレッソをベースにした「ラテ」や「キャラメルマキアート」などの新しいコーヒーの飲み方が日本でも広く浸透していくこととなりました。