ローンオフェンダーに
共通する「思考の固着」

 本件事件の動機は明らかになっていないため、あくまでローンオフェンダー一般という観点で以下述べたい。

 近年の国内におけるローンオフェンダーによる事件の傾向では、通常の生活や目立たない生活をしつつ、社会に対する恨みを一方的に募らせている。

 実は、前述の西武新宿線爆破未遂事件の男はコミュニケーションが苦手で職を転々とした。最後は無職となり、「自分を受け入れてくれない世間が悪い」と矛先を社会に向け、「職に就いている人を巻き添えにしたい」という動機を持っていた。

 また、最近では、京都アニメーション放火殺人事件や京王線の乗客を襲撃したジョーカー事件なども、社会から孤立し、“浮いて”しまい、思考を固着させ、自己の責任を無視して、一方的に社会を恨み、他人を巻き添えにする思考に変換されていった。

 そして、山上被告は旧統一教会により家庭環境が崩壊し、孤立し、当初は旧統一教会に、そして後に安倍元首相に対して一方的に怒りを向け、極めて身勝手な犯行を行った(断っておくが、山上被告を称賛する風潮は断じて許されない)。

 これら共通点は、社会において孤立、ないしは自分の“内”にこもり、一方的に思考を固着させたということである。

 もし彼らが社会において、知られる機会があれば、事件は未然に防げたかもしれない。

 西武新宿線爆破未遂事件のように、社会(この時は薬局)が異変に気が付き、勇気を持って警察に通報していれば、未然に防げる場合もある。

 行政・警察は当然であるが、社会も一体となって、真剣に「テロ」に対応すべき局面に来ている。警備については、これまでの安全な日本を基準としたものから、より厳重化させなければならないだろう。

 最後に強調したい。本事件を起こすようなローンオフェンダーはダークヒーローでもなんでもない。

 犯罪者である。

(日本カウンターインテリジェンス協会代表理事、元警視庁公安部外事課警部補 稲村 悠)