東大生ほど勉強している大学生はいない。その理由は……
──東大生の場合、長期的なモチベーションはどうやって保っているのでしょうか。入試までは「東大に入る」という目標で頑張れると思うのですが、その先は……。
西岡:基本的に東大生って、どっちつかずのモラトリアム人間が多いんですが、それでもよく勉強します。
たぶん「勉強は未来に対する投資だ」と考えており、かつ未来に希望を持っているからです。
だから、プラスのイメージで勉強を楽しむことができるんです。
富永:私の塾の講師たちを見ていても、東大生は本当によく勉強しますね。しかも、それを楽しんでいる感じが伝わってきます。
これは、中学受験でも同じことが言えるかなと。
なんだかんだ言って難関校が人気なのは、そこで学んでいる生徒たちが輝いているからなんだと思います。
ガリ勉しているのではなく、楽しそうに学んでいて、明るい未来を感じさせるんです。
将来への希望が薄い日本人の国民性
西岡:「うちの子、全然勉強しないんです」と悩んでいる親に欠けているのが、「未来に希望を持つ」という視点ではないでしょうか。
「そもそも、おたくのお子さんは、未来に希望を感じているのですか」と問いたいくらいです。
ウェルビーイングに関する調査では、日本人は「5年後や10年後といった未来にどの程度幸福でいると思えるか」という質問に対する答えが、先進国の中で圧倒的に低い。
たとえば、今の幸福度が10段階の5であっても、将来7や8に上がっていくのなら希望が持てます。
ところが、親の世代は年金の心配などもあって、今7であっても将来が5という人が多いですね。
そういう姿を親が見せていれば、子どもは未来に希望を持ちにくくなってしまいます。
ならば勉強するはずがありません。
それなのに、親は自分は希望が持てない分、子どもに夢を託そうとするのです。
親の夢を子どもに肩代わりさせてませんか?
富永:日本人は、自分以外の存在に夢を託しやすいのかもしれません。
私は、日本サッカー協会の登録仲介人として国内外のサッカー選手や関係者と接する機会が多いんですが、よく言われるのが「日本は、なぜ選手一人ひとりにこんなにフォーカスするんだ?」ということ。
野球もそうだけれど、日本人は選手一人ひとりのストーリーを追うことに熱心で、スポーツそのものを楽しんでいないというのです。
一方で、欧米の人たちは、ホットドックとビールを買って、子どもと一緒にスポーツを見ること自体に幸せを感じているんです。
親が自らそうした幸福感の見本を示せなくて、子どもにそれを掴めというのは無理があります。
ましてや、親の夢を子どもに肩代わりさせるようなことはしてはいけません。
受験がうまくいく家庭では、親が子どもと自分を分けることができていて、共依存にはなっていません。