「トラガール」のずれと
ひたむきに働く女性トラックドライバー

 日本の「トラガール促進プロジェクト」は、社会の、女性トラックドライバーへの理解を推進する狙いとしては非常によかった。しかし切り口があまり芳しくなく、現場から圧倒的な支持を得るには至らず、効果は今一つのまま、ふんわり頓挫したようである。
 
 トラックドライバーの経験がある女性ライターの橋本愛喜氏による記事("トラガール"にピンクのトラック…女性トラックドライバーが対峙するホワイトカラーたちのズレ/2022年3月8日)にその様子が詳しく書かれている。それによると、たとえば「“ガール”と自称したいわけではない」と首を傾げる現役女性ドライバーの反応や、「女性の女性による女性のためのトラック」として開発されたピンクの水玉トラックが、現役女性ドライバーの一部に不評なことなどが挙げられている。
 
「トラガール促進プロジェクト」のサイトを見てみると、その分野における女性の労働環境改善に主眼をおいてさまざまな情報を取り扱っており、やろうとしていることは悪くなさそうだ。しかし、「トラガール」という呼称や、ピンクの水玉トラックのインパクトが強すぎたため、そっちが先に来て現場の支持を得ることができなかった。
 
 しかし、国内女性トラックドライバーの数は微増している。

 これにはどうやら、SNSが関わっているように思われる。ためしに「トラック女子」で検索してみると、そのタグがついたInstagram(Twitterではなくインスタというのがポイントである)上の画像や、女性トラックドライバーの動画なんかがたくさん出てくる。彼女らがSNSに情報をアップしていくことで女性のトラックドライバーが少しずつ注目され、関心を集めてきた結果がドライバー数微増につながっているのではないか。
 
 女性トラックドライバーのYouTuber界わいも、群雄割拠で面白い。中にはかなりの人気を博している女性もいる。今後さらに盛り上がっていく可能性を秘めた界わいであるだけに、今から参入して将来古参として振る舞うのもいいかもしれぬ。魅力的に働く女性が多いので、探せばすぐ「推し」が見つかるであろう。 
 
 女性トラックドライバーへの理解が進めば、労働環境は改善する。女性の職業の選択肢は増え、運送業者は女性の雇用で会社がマイルドになり、世の中のドライバー総数はアップして2024年問題が一歩解決に近づく――という、いいことずくめの展開である。ぜひ関心を持って見守り、もり立てていきたい。