業務部門と協力・連携するための3つのポイント

 冒頭で紹介した通り、ライオンにとって基幹システムの刷新は、大規模な業務改革(BPR)と同義であり、業務部門との連携は不可欠だった。木下さんは、「業務部門と確固たる協力体制を構築するには3つのポイントがあった」と言う。

 1つ目は、「体系的なチェンジマネジメントプランの策定」だ。

「最初の段階で、なぜ長年培ってきた業務プロセスを変える必要があるのか、具体的にどう変えれば変化に追従できるのか、チェンジマネジメントプランを組んでしっかり伝えること。業務部門の理解促進と細かなトラブルの回避につながります」

 2つ目は、「業務部門とのコミュニケーションプランを練る」こと。

「あらかじめ『この部門に対しては、この人を窓口に、こういうアプローチをしていこう』というプランを練っておくとスムーズです。私たちは、各業務部門にBPRリーダーを配置して窓口を明確にしていましたが、どんなコミュニケーションをどれくらいの頻度で取ればよいかといったところまでは、計画が不十分だったと感じています」

 3つ目は、「結局、やれるだけのことをやるしかない」ということだ。

「各業務部門に対して業務プロセスも細かく確認しましたし、導入前の操作トレーニングも200回以上実施しました。でも、いくらやっても実際に成功するまでは十分にやったとは言えませんよね。『やれるだけのことをやる』というマインドで臨むしかありません」

 木下さんは、「次はもっとうまくやる」と意気込む。

「古くて40年前、一番新しくても20年前から同じシステムを使ってきましたので、プロジェクトに関わった社員のほとんどが、初めての基幹システム刷新となりました。ある意味、それが良かったのかなと思います。『前回の刷新ではこうした』とか『前の仕組みはこうだったから今のやり方はおかしい』とか、変に先輩風を吹かす人がいませんでした。大規模がゆえ全体像がつかみきれないとか、各工程で何をすべきか分からないといった課題はありましたが、今回の経験を通して、みんなで学習できたと思います」

 プロジェクト・レグルスの成功を経て、2023年、ライオンはデジタル戦略部を新設した。新たなシステム基盤と難易度の高いプロジェクトを成し遂げた経験を武器に、より全社的なDXを進めていく。

デジタル戦略部のメンバーとなった岡田小百合さん(中央)、黒川博史さん(右)は、同社のDXを牽引してきた実績があるデジタル戦略部のメンバーとなった岡田小百合さん(中央)、黒川博史さん(右)は、同社のDXを牽引してきた実績がある Photo by M.S.