神戸を去るイニエスタに
古橋がかけた言葉とは

「難しい質問ですね。出会っていなかったら、という想像ができないというか、それぐらいあの時間は僕のなかで大きかったし、僕の良さというものをたくさん伸ばしてもらえた。ピッチの外では本当に尊敬の思いしかない。言葉で言い表せないほど、一人の人間としてアンドレスが好きなので。日本という国で、神戸というクラブで一緒にプレーできて本当に良かったと思っています」

 こう語った古橋は、神戸を去るイニエスタへ伝えたい思いを問われると、今度は満面の笑みを浮かべながら「本当に大好きです」と熱いエールを送っている。

「これからもどんな形であれ、一日でも長くアンドレスらしくサッカーをしてほしい。僕は僕で違う場所で一つでも多くゴールを取って、僕の名前が届くように頑張りたい」

 有言実行というべきか。古橋は27日のアバディーンとのシーズン最終戦で、前半だけで2ゴールをマーク。今シーズンのゴール数を「27」にまで伸ばし、追走してきたオランダ出身のFWケビン・ファン・フェーン(マザーウェル)に2得点差をつけて得点王のタイトルを獲得した。

 2点目を決めた直後には、ホームのセルティック・パークを埋めたファン・サポーターへ向けて、左右の親指で背中をさしながら誇らしげなポーズを取った。そこにはバルセロナ時代からのイニエスタの象徴で、古橋自身もセルティックで背負っている「8番」がまばゆい輝きを放っていた。

 ヨーロッパ各国のリーグ戦で日本人選手が得点王を獲得したのは初めて。セルティックの連覇に貢献した古橋は、すでに選出されていたリーグ年間最優秀選手賞に快挙で花を添えた。動画で語った「一つでも多くゴールを」と「僕の名前を届ける」を、師匠と慕うイニエスタへさっそく捧げた。

 岐阜時代から高く評価されたスピードに、相手の裏を突くタイミングやゴール前のポジショニング、スペースやフリーの味方の使い方、何よりもシュートのバリエーションをイニエスタとのプレーから融合させた。イニエスタが日本に果たした貢献、残した財産の象徴が古橋の晴れ姿となる。

 カップ戦を含めた今シーズンの公式戦で、33ゴールを挙げた古橋の視線は、日本代表として臨む6月シリーズへ向けられる。カタールワールドカップ代表入りを逃した古橋は、昨年9月以来となる代表でのプレーで、成長した姿をファン・サポーターへ見せたいと地元メディアに語っている。

「経験を生かして、選手として持っているものを表現して感動を与えたい。日本代表のスタイルがどうであれ、僕はストライカーなので、ゴールを決めてみんなの応援に応えたい」