高額報酬を出す企業より、カルチャーが強い企業が勝つ

入山 文化を戦略的に作れている伝統的な日本企業はほとんどないと思いますが、Google、Amazon、Netflixは圧倒的にやっているんですよ。なぜなら、カルチャーがなければ人材が流出しやすくなるからです。

 今、僕はSORACOMというIoTデバイスや通信、アプリケーションなどを、ワンストップで提供する会社の社外取締役をやっています。SORACOMは世界で勝負しているのですが、アメリカのデジタル系企業だと新卒の初任給が3000万円くらいのこともあるので、SORACOMは社員を引き留めておくのは大変なはずです。

佐宗 デジタル系の採用戦争は本当に大変ですよね。

入山 でも、びっくりするぐらい社員が辞めないんです。驚いて、社長で創業者の玉川賢さんに理由を聞いたら、「SORACOMはカルチャーがしっかりしているからです」というんです。実は玉川さんは日本でAmazon Web Services(AWS)を広めたエバンジェリストで、Amazonのリーダーシップ・プリンシプルというAmazonの行動指針が大好きなんですよ。玉川さんはこれを改良してSORACOM User Groupという行動規範を作り、それを信じて行動しているし、採用時も行動規範の内容が好きかどうか、それに合っている人材かで採用しているので、社員が辞めないんですよね。

佐宗 Amazonのリーダーシップ・プリンシプルは、『理念経営2.0』でも好例として紹介させていただきました。採用時にも使うことで、よりバリューにフィットする人材を集めていますよね。

入山 そうなんです。3000万円という給与に惹かれて就職した人は、4000万円のオファーがあったら辞めてしまいますが、カルチャーが好きだという人は給与額だけでは簡単に揺るがないんです。そういう意味でもカルチャーは非常に重要です。日本企業はミッション・ビジョン、バリュー、パーパスも、ビジョンも弱いのですが、カルチャーを意図的に作ることを、ほとんどの伝統的な会社が一切やっていない。戦略的に作っていくことが重要ですし、『理念経営2.0』にはその作り方が書かれているのがすばらしいですね。

「知の探索」に挫けた経営者が、まず考えるべきこと

(第3回に続く)