外資の土地所有を禁じる国も

 日本では外資や外国人がいとも簡単に離島(あるいは島の一部の土地)を所有できてしまうが、アジアには直接的な所有を禁止している国がある。その一つがフィリピンだ。

 フィリピンには7641の島がある(2023年、外務省HP)が、土地は国家の資産とみなされ、フィリピン国民のみが所有できることになっている。フィリピンの法律に詳しい弁護士法人OneAsiaの難波泰明弁護士は、「外国人は土地や島全体を直接購入し所有することはできません」と語る。

 また、島嶼国モルディブの島の数は1192(2023年、外務省HP)に上るが、外国人の土地所有を認めた2015年の法律を、「主権喪失の可能性がある」との懸念から2019年に撤回した。インド洋の重要なシーレーン(経済や貿易、有事の際に重要な位置付けになる海上交通路)上にある同国は、当時、中国資本の開発進出が相次いでいたという。

 1万3500の島々(2020年、外務省HP)を擁する世界最大の島嶼国インドネシアも法律により外国人は島や土地を所有することはできないが、一方、スリランカではそれができる。スリランカのある村で観光業を営むハニファ・ファイスさんが「中国人の資金力は地元民とは桁が違いすぎる、このままでは再びコロニー(植民地)になりかねない」と、その危機感を過去の歴史に重ねていた。

 アジアの島嶼国には、植民地時代の苦しみから生まれた法制度や離島の保全・管理制度がある。フィリピンやモルディブなどで外資が離島のリゾート開発を行う場合、期間限定のリース形式を要求されるのは、外資や外国人による“完全な支配”を排除するためなのだろう。

 こうした経験のない日本は今まで無防備でいられたが、アジアの海が大きく変化する今、離島の保全・管理について一歩突っ込んだ早急な議論が求められている。