商品コンセプト「BIG」「EASY」「FUN」
家族と楽しめるがポイント
新型セレナの商品企画を統括する、中村智志氏は先代セレナの振り返りの中で、セレナは国内で中型ミニバンを指すMセグメントで安定的は販売を保っているが、「技術にまつわるイメージが飛躍的に向上した一方、セレナとして最も重要な家族と楽しめるというイメージが低下している」と指摘する。
その上で、商品コンセプトを「BIG」「EASY」「FUN」として、あくまでも技術的な裏付けを持ちながら、“家族と楽しめる”ことを追求したという。
「BIG」については、3列シートでスライド機能を持ち、車内での前後移動が楽なスマートマルチセンターシートを採用するなど、シートアレンジを拡充。「EASY」と「FUN」では、プロパイロット2.0や、白線がなくてもGPSやアラウンドビューモニターで周辺状況を把握するプロパイロットパーキング、また、100V/1500W AC電源などを採用した。
さらに、「FUN」の神髄は走りの良さにある。
具体的には、「疲れない」「静か」「コントロールしやすい」「車酔いしにくい」がキーワードとなる。
その上で、これらが複合的な効果がある。
「恵みの雨」の中での走行では、最初に最上グレードの「LUXION」で東名高速と新東名高速道路を走行した。同グレードはe-POWERの設定のみである。
クルマ全体の印象は、「上級SUVのような重厚感がある扱いやすさ」だ。
絶えずワイパーが動いているが、見切りが良く、しかもクルマがガッシリしていて動きの先読みがしやすい。加速時にエンジンがかかっても、「エンジンがかなり遠く」に感じる静粛性がある。減速時の回生ブレーキも、強過ぎず弱過ぎず、コーナー進入時のクルマの姿勢に安定感が高いので、ここでも動きの先読みがしやすい。
また、水しぶきを跳ね上げる音があまり気にならない。ボディの開口部が多いミニバンの苦手とする外部音の進入に対して、「愚直にボディの穴をふさぎ、吸音材/遮音材を適所に配置した」(担当エンジニア)という。
さらに驚いたのは、横風の影響の少なさだ。空力的な配慮に加えて、やはりハンドリングの安定性が効いている。
次いで「ハイウェイスターV」e-POWER車に乗った。
走り出してすぐ、「ハンドリングが軽い」と感じた。
開発担当者によると「LUXIONとは、タイヤのサイズは同じだがタイヤの基本設計が違う」と指摘するが、それがハイウェイスターVの軽やかな走りを高めているようだ。
箱根方面に向かう道幅の狭いワインディングを走ると、「あれ?4WDか?」と思うほど安定した旋回性がある。少々極端に聞こえるかもしれないが、走りのイメージは、日産「エクストレイル」と車体を共用する三菱自動車「アウトランダーPHEV」に近い軽やかさがある。
こうした走りの安定感と安心感は、ドライバーに対してだけではなく、助手席、2列目、3列目の乗員もしっかりと実感できるはずだ。
後席の視界についても、天吊モニターと前方視界との位置関係を精査したデザインとしており、これも酔いにくくするための工夫だ。
総じて、とてもポジティブな印象をもった「恵みの雨」の中での試乗だった。
こんな状況でも、とにかく疲れが少なく、安心して走れた。