4月以降、残業が月60時間を超えると
割増賃金率が50%に

 さらにE社労士は続けた。

「賃金台帳も見せてもらいました。給与の計算は毎月末日締めですね? メンバーの残業代(時間外手当)とAさんBさんの休日出勤分の割増賃金は、法定通り計算されています。ただし、4月以降の残業代について、月60時間を超えた分は割増賃金率が25%から50%に上がります。5月の出退勤記録ではAさんとBさんがこのケースに該当しますね」

参考:厚生労働省案内リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf

 D部長は困り顔で、どうしたらいいんだと呟いた。

「まずAさんとBさん、そしてC課長が日曜休日を取れるようにして、次にメンバー全員の残業時間を減らし、人手不足を解消する方法を検討しましょう」

<残業時間の削減と人手不足への対処方法の一例・甲社の場合>
○ 機械オペレーターの求人募集は継続するが、求人媒体の追加や変更も検討し早期採用につなげる。
○ 人員補充について、新規採用だけではなく、他部署からの配置換え、派遣社員を受け入れる、退職した社員を再雇用するなども合わせて検討する。
○ 休日出勤や残業を減らすには、業務内容と担当者の見直しを行う。新製品の開発など急を要さない業務は当面行わないなど業務の負担を軽くする等が考えられる。

 E社労士と面談を終えたD部長は、翌日C課長と相談し、新メンバーが入るまで新製品の開発に係る業務をすべて中断するなど、A、B、C課長の業務負担を軽減し6月以降、日曜と隔週1日の休みを確保することにした。更に残業を減らすために管理業務全体の見直しを行い仕事の効率化を図る予定だ。そして新たに考えた求人方法とは……。

D部長が考えた、
新たな求人方法とは?

 6月上旬の日曜日。AとBは再び一緒にスーパー銭湯の暖簾(のれん)をくぐった。受付で料金を払っていた時、ふとAは背後の壁に貼られていた手書きのポスターに目を止めた。そこには見慣れた文字で、こう書かれていた。

「機械オペレーター募集・年齢不問・一緒に楽しく働きませんか? 詳しくは甲社サイトhttps://~ にアクセス」

 それはD部長が書いた求人募集だった。どうやら、スーパー銭湯に来る客を狙っているようだ。

「部長もなかなかやるなーっ!」

 Aは笑いをこらえながら、しばらくポスターを眺めていた。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。ご了承ください。