「リスクを取って、手を抜く」ことで余裕が生まれる
それでは、どうすれば社会や経済や企業に「余裕」を生むことができるのでしょうか? それは、「リスクを取って、手を抜く」ことです。
たとえば、自社のある部門や子会社の内部統制が十分に機能していると思えば、チェックの頻度を落とすなどの工夫をする、すなわち、内部管理においても「リスクとリターンの比較考量」という概念を入れることが有効だと考えます。
こうした「リスク・アプローチ」は、経営者がその妥当性を十分検討して行う必要がありますが、そのルールが生まれたそもそもの意味や規制の目的を常に確認しつつ、合目的的に行動することは重要です。
「余裕」を生むためには、「形式美」重視の考え方(マインドセット)を転換する必要があります。東証とニューヨーク証券取引所の両方で鐘を鳴らした経験からして、イベントの1時間前に経営者ら時給の高い人々を集めて丁寧に事前の説明が行われる日本と、事前説明なく登壇させ、衆人環視のなかで1分前に耳元で鐘の鳴らし方と止め方をレクチャーする米国では、費用対効果がまったく違います。
日本企業、特に歴史があり一流と呼ばれる企業ほど、企業活動のさまざまな場面で必要以上に「形式美」を重んじ過ぎている部分があります。
意図的に「手を抜く」ことと同時にその浮いた時間やお金を「アニマルスピリッツ」活用に回すことを、経営者みずからが考え率先垂範することで、企業や社会のカルチャーは少しずつ変わっていくものと考えています。
※この記事は、書籍『CFO思考』の一部を抜粋・編集して公開しています。