決算書で読み解く! ニュースの裏側 2023夏#2Photo:PIXTA

3年ぶりに黒字を確保した日本航空(JAL)。だが、利益水準はライバルのANAホールディングスを約550億円下回った。JALはこの利益差を「貨物事業だけ」と強調するが…。特集『決算書で読み解く! ニュースの裏側 2023夏』(全27回)の#2では、両社の差について財務数字を基に分析する。ANAとの差を埋めるべく“禁じ手”の解禁に踏み切るJALに勝機はあるか。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

「週刊ダイヤモンド」2023年6月24日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

JALとANAの利益差は550億円
JAL赤坂社長「差は貨物」断言も

「差は貨物だけ」。日本航空(JAL)の赤坂祐二社長は5月2日に開かれた2023年3月期の決算会見でそう言い切った。

 新型コロナウイルス禍が一服し、3年ぶりに黒字を確保したJAL。だが、利益は同じく3年ぶりに黒字転換したANAホールディングスを単純計算で約550億円下回った。会見で、両社の利益差について問われた赤坂氏が強調したのが、貨物である。

 コロナ禍による国際物流の需給逼迫は航空貨物の単価高騰を招いた。この物流バブルの恩恵をより多く享受したのはANAだ。ANAが自社で貨物専用機を運航する一方、JALは10年の経営破綻以来、貨物機の保有を“封印”してきたからだ。

 収入の差は明白である。JALの23年3月期の貨物収入は2247億円となり、ANAを約1200億円下回った(下表参照)。

 では、赤坂氏が強調するように差は「貨物だけ」なのか。両社は会計基準が異なるものの、開示している財務の数字を基に分析すると、実は貨物以外にも二つの要因が利益差をもたらしていた。

 次ページでは、両社の利益差をもたらした要因を明らかにする。実は、JALはANAとの差を埋めるべく、経営破綻以来の“禁じ手”を解禁する。それは経営再建に尽力した稲盛和夫氏の教えとの訣別を意味するのか。JALに勝機はあるのか。