ヤチヨとホンダの蜜月は長く、ホンダのバギー車や軽トラック「アクティ」、軽乗用車「ビート」、軽商用車「トゥデイ」の受託生産を手掛け、96年にはホンダ軽自動車生産の全面受託をするなど、ホンダの国内軽自動車生産子会社として大きくクローズアップされた頃もある。当時、筆者もヤチヨ鈴鹿工場のトゥディ生産ラインを取材してホンダとヤチヨとの連携を目の当たりにした体験もある。
過去には、ホンダ鈴鹿製作所に近接するヤチヨの鈴鹿工場敷地に新工場を建設して、ホンダの軽乗用N-BOXを集中生産する計画が打ち出されたこともあったほどだ。しかし、この新工場はリーマンショックで建設中止となり、その代わりに軽自動車はホンダ鈴鹿製作所での生産に変更となった。ヤチヨは、苦杯をなめて社員の早期退職を迫られたほどであった。
ホンダ系サプライヤーの中でもホンダの生産計画の変更に翻弄されてきた経験が多いのがヤチヨといえるが、今回も同様に、ホンダのEV(電気自動車)化に向けたサプライチェーン(部品・資材供給網)の構造転換・再構築の一環として、一気に売却されることになったといえよう。
ヤチヨ売却とは反対に
サプライヤーを取り込む動きも
そもそもホンダの三部敏宏社長は、40年にグローバル新車販売をEVかFCEV(燃料電池車)とする目標を打ち出しており、これに伴い、サプライチェーンの構造転換、見直しを積極的に進めているところだ。
すでに車載電池では、韓国・LGエナジーソリューションと米国に新工場を建設する計画を打ち出した。また、車載電池の素材調達では韓国・ポスコや阪和興業と提携している。
加えて、ホンダのEV戦略へのキーポイントになるとみられるのが、「日立Astemo(アステモ)」だ。近頃、同社の主導権をホンダが握る動きが目立っている。