何回も来日して美術館や映画館、書店に足を運ぶ
日本滞在中の生活費は、月に100万円弱

個展会場でのクロエ・チェン氏個展会場でのクロエ・チェン氏(左)

 他の中国の00后(リンリンホー、2000年代生まれ)、05后と同じく、SNSネイティブだ。生まれたときからネットに触れることが当たり前で、自分たちが生まれるずっと前に大ヒットした作品や、マニアックなジャンルの作品にネットで触れてきた。

 これらの日本のアニメや映画もすべてネットで知り、夢中になったというが、彼女の場合、実際に何度も来日して、美術館や映画館、書店などに足を運ぶ機会がたくさんあるところが、同世代の一般の中国人とは比較にならないほど恵まれている。

 日本滞在中の1カ月の生活費を聞いたところ、「だいたい5万元(約100万円弱)くらい」。日本人の美術講師を個人的に雇い、レッスンしてもらうこともあると話していた。

 

一人っ子政策第1世代以来、
中国の若者はどんどん豊かに繊細になってきた

 私もこれまで中国の90后(ジウリンホー、90年代生まれ)、95后(ジウウーホー、95年以降生まれ)には数多く取材してきた経験がある。中国の一人っ子政策の第1世代で、「新人類」といわれた80后(バーリンホー)と比べても、さらに経済的に豊かになった中国に生まれ育ったのが90后や95后だ。彼らは社会的成功よりも個人の幸せを追求したり、趣味を重視したり、好きなものはとことん消費する人が比較的多いと言われているが、00后になると、さらにその傾向は強くなる。「盲盒」(マンフー、中国版ガチャガチャ)の流行などからも分かる通り、中身を見ないでモノを買うことに何の抵抗もなく、他人を疑うことも少なく、繊細だ。

 これまで取材した中には「高校までの間に数カ国に旅行したことがある」という人もおり、比較的エリートの家庭で育った人もいたが、18歳で世界の数十カ国を旅行したことがあるという若者に出会ったのは初めてだった。

 中国で増加している富裕層の子ども(富二代)には、チェン氏のように、幼い頃から何不自由なく育ち、世界中を旅行し、一流の芸術や文化に触れて感性を磨いてきた人が多いと聞いていた。彼女はまさにそうした新世代の一人なのだろう。