したたかな頭の良さと周囲を魅了する才能

「すぐ講演する人」を実際に採用してみると、成果に結び付ける持続的な努力をする能力の欠如が見られたり、おいしいところだけをやりたがる傾向があったりして、社内の信頼が得られず、長続きせずに去っていくことも多々ある。往々にして、こんなことなら採用しなければ良かったと会社側は不満を言うのだが、それはその人のせいではなく、真の能力を見抜けなかった会社の問題だ。

 世評に惑わされずにその人自身を観察し、人を巻き込むのが上手なその人の持つ雰囲気にのまれず、先入観を持たずに話の内容を吟味してみれば、中身そのものの深さはなくウケる話を得々としているだけということがわかりそうなものである。それは、実際に講演録を作ってみると一目瞭然だ。

 一方、風のように去っていく彼らはしたたかである。しっかり次の転職先を見つけ、前職を上回る好待遇を獲得する。

 おそらく、さほど関係の強くない人を自分のとりこにする能力が卓越しているのであろう。魅力的な話術やプレゼンテーションスキルを生かし、ヘッドハンターを魅了し、他社の社長に高いお金を出しても採りたいと思わせるのである。