前後オーバーハングを切り詰めて、タイヤを四隅に配置
クレイモデルを活用して練り上げたデザイン美

 クラウン・スポーツのデザインについて解説しよう。エクステリアでまず注目されるのが、ボディサイドのキャラクターラインを減らし、ボディパネルの滑らかな抑揚で陰影を表現している点である。これは欧州のプレミアムブランドやラグジュアリーブランドで主流となりつつある手法で、うまくいけば品のいいデザインが出来上がるものの、プロポーションのよさや丁寧に煮詰められたパネル処理が必要になる。つまり手間ひま、コストがかかるデザイン手法といえる。

 その点、クラウン・スポーツはプロポーションも美しい。前後のオーバーハングを切り詰めて凝縮感を生み出すとともに、ボディの四隅に大径タイヤを配置することで力強いスタンスを生み出すことにも成功した。クラウン・クロスオーバーよりホイールベースを短くしたのは、相対的にタイヤを大きく見せる効果も狙ったものだという。

 もうひとつ、クラウン・スポーツのデザインで印象的なのがリアフェンダーからテールゲート回りにかけての造形である。まずはリアフェンダーを大きく外側に張り出すことで筋肉質的な力強さを表現。クロスオーバーよりもボディが40mm幅広いのは、このワイド感を生み出すためだったようだ。さらには、リアフェンダーやテールゲートなどが織りなす立体的な造形を、破綻させずにまとめ上げた手腕も見事である。これだけさまざまな面やラインを矛盾なくまとめ上げたデザインは、従来の日本車ではめったに見られなかったものだ。

 これほど完成度の高いデザインに仕上げることができた秘密を、チーフデザイナーを務めた宮崎満則氏は「最近はデジタルツールを使ったデザイン作業が主流になっていますが、クラウン・スポーツではこれまでにないくらいクレイモデルを活用しました。おそらく、クレイモデルを使わなければ、これだけの造形はできなかったと思います。とにかく苦労しました」と語ってくれた。

 クラウン・スポーツのデザインでひとつだけ苦言を呈するなら、リアバンパーに相当する部分が、いかにも「とってつけた」ように見えることで、周辺に比べて決して洗練されているとはいえない点にある。この部分の“膨らみ”は、どうやら北米の衝突安全規準をクリアするのに必要なものだったらしい。なお、クラウン・スポーツの輸出は決まっているものの、具体的な輸出先については未定だという。