全国110人と家族になる「拡張家族」
私は、コロナ以前から新しいライフスタイルの選択肢として、多拠点ライフを提唱してしてきました。しかしこの社会変化を経験する中で、多拠点ライフを通じた「分散する生き方」と「分散する社会」こそが、不安定な現代、そしてアフターコロナの未来において、個人の不安を少しでも取り除き、安心できるセーフティネットになりうると強く思うようになりました。
冒頭にも述べた大自然の大分から、東京都・渋谷のど真ん中のセンター街を通って帰ってくる場所、それが私が住む、拡張家族「Cift」のシェアハウスです。
「Cift」とは、血縁や制度によらず相手を家族だと思ってみようという意識を持ちながら一緒に生活をするコミュニティです。立ち上げ時の38人から、今は全国に約110人のメンバーがいます。年齢は0歳から60代まで。渋谷だけでなく京都にもシェアハウスの拠点があります。
ここに日常的に住んでいる人もいれば、普段は別のところに住んでいるけれど、もうひとつの家として、あるいは時々くる第三の居場所として、このコミュニティに所属しているメンバーもいます。
100人いれば、100通りの家族観がある。私たちはそれぞれが育った環境や家族観を持ち寄りながら、生活や人生をシェアして、「家族とはなんだろう」という問いを日頃から分かち合い、対話を重ね、お互いが安心して豊かだと思える家族のあり方を模索しています。
「家族になってみる」という意識の共有を通じて人と深く関わろうとすることは、幸せなことだけでなく、時に衝突したり大変なこともあります。けれども、お互いの人生をシェアして、家族だと思って寄り添ってくれる家族がたくさんいる毎日に、とてつもなく幸せを感じています。
「全国に、世界中に、いくつもの家がある」という暮らしを誰もができる時代になりました。今この瞬間、思い立った場所に、どこへでもいける自由と選択肢があると思ったらワクワクしませんか。
これまで、多くの人にとって「家」とは、ひとつの場所に住むことが一般的であり、ふたつ以上の家をもつことができる生活は、「別荘」のような富裕層やリタイア層などお金に余裕のある一部の限られた人にしかできない選択肢だったはずです。
また、住む場所は仕事に大きく左右されてきました。会社から通勤できる場所に家を構え、転勤となったら、引っ越さないといけない。もしくは、家族と離れたくないのに単身赴任をしないといけない人も少なくなかったと思います。
しかし近年、家や空間をシェアする発想で、多様な住まいの形を叶えるサービスやプラットフォームが次々と登場してます。「家と別荘」といった家賃に2倍のコストをかけなくても、今の家賃と同等、あるいはそれ以下に費用を抑えながら、多拠点生活を始めることが可能になったのです。
SNSの普及以降、学校や会社以外のつながりやコミュニティは増えましたが、一方で「暮らす」というある種プライベート性も高い生活圏にまたがるコミュニティや人とのつながり方は、コロナ以降、注目され始めたように思います。
そして家とは一般的に買うか借りるかの二択で大きな支出を伴うものでした。収入の大部分が家賃に消えていき、気軽に引っ越せない、ローンを何十年も払い続けなくてはいけない…といった様々な負担と制約を伴うものとされてきました。
都心の物件価格はこの10年高騰し続けており、都心部の新築マンションは2億円を越え、中古マンションですら1億円と簡単には手を出せない価格になりつつあります。さらに不動産価格の上昇がいよいよ賃貸にも波及し、賃貸マンションの家賃が急上昇。もっと広いところに住みたいけど…マイホームを持ちたいけど…そんなことは夢のまた夢。
「住みたいところがあっても気軽には住めない」と諦めてしまう前に、住まいに対する当たり前と思ってきた考えを180度転換することをおすすめします。