定期利用が約9割の
特異な路線

 特許申請時に想定した運行計画は、ピーク時6分間隔(10本/時)で、各駅停車と快速が5本ずつ。この快速運転が宇都宮ライトレールの最大の特徴だったが、利用者が慣れるまで定時運行に不安があることから、各駅停車のみピーク1時間あたり8本、所要時間に余裕を持たせた暫定ダイヤで開業した。

 需要予測は利用が定着した開業3年後の、平日1日平均の利用者数は1.6万人。うち79%が通勤、8%が通学で、定期利用が9割近くに達するとしている。

 2019年度鉄道統計年報によれば、事業者単位で定期利用率が8割を超えるのは熊本県のくま川鉄道(2020年に被災で長期運休中)のみ。これ以外に7割を超える事業者は、169事業者(貨物専用線と定期券の設定がない事業者を除く)中16事業者にすぎないことからみても、宇都宮ライトレール線はかなり特異な路線である。

 では実態はどうなっているのだろうか。冒頭に記した通り、最初の平日である8月28日と翌週9月4日の午前7時から7時30分ごろまで、宇都宮駅東口停留場を発着する電車の乗降者数を確認し、その後、終点の芳賀・高根沢工業団地停留場まで乗車して利用状況を調査した。

 2週に分けて調査したのは、28日については初日から定期券を切り替えた利用者がどの程度いるのか、また朝ラッシュ時間帯の初運行がスムーズにいくかの把握。4日については沿線工業団地の企業バス(宇都宮駅から事業所まで直通する社員専用バス)が8月末に運行終了した後、どの程度LRT利用に切り替えたのか比較するためだ。

上り方面の利用者は
下り方面の半分程度

図表:宇都宮駅東口停留場午前7時台発着列車画像1 拡大画像表示

 画像1は7時台の発着列車を示したもので便宜上、宇都宮から出発する下り電車をB1~B8、宇都宮に到着する上り電車をA1~A7としている。

 まず宇都宮駅東口に到着する上り電車だが、こちらは芳賀・高根沢工業団地発の電車(A2、A3、A6、A7)と、車庫のある平石から出発する電車(A1、A4、A5)の2種類がある。一般的に通勤路線はターミナルから離れるにつれて利用者は減少する。宇都宮ライトレール線の場合、平石の先で鬼怒川を渡るため、ここで一度市街地は途切れており、宇都宮都心の求心力は減るはずだ。

 だが興味深いことに、平石発の電車はほとんど乗客が乗っていない。具体的に言えば28日は10人、4日は20人程度だ(いずれも筆者の目算による、以下同)。一方、芳賀・高根沢工業団地発の電車は、28日は50~70人、4日は80~90人程度だった。