私、人との距離感がおかしいみたいなんです。
恋人も友人も、いつも長続きしません。気の合う友達とか、しょっちゅう連絡を取り合うような子もいましたが、全部自分から人間関係をリセットしてしまいました。
SNSで知り合った人を急にブロックしたり、自分のアカウントを消しちゃうこともあります。
みんなには悪いことをしてしまったと思うし、自分はひどい人間だという罪悪感もあります。
でも、やっちゃうんです。
Kさんの場合、人間関係を断つ理由が相手側にはありませんでした。
何か嫌なことをされたからではなく、自分の気分次第で急に人間関係をリセットしてしまうといいます。
Kさんは、そんなふうに気分次第で行動してしまう自分をひどく責めている様子でした。
ですが、気分が良い時と悪い時では、どんな人でも行動は変わります。
気分が良い時なら笑って流せる冗談も、気分が悪い時には「笑えないどころか怒ってしまう」というのはよくある話です。
だから本当は、気分次第で行動してしまう自分を責める必要はないのです。
「誰かから急に関係を断たれた
という経験はありませんか?」
それでもKさんは浮かない表情で、「悪いことをした」「傷つけたと思う」と繰り返し自分を責めていました。
そこで私は、「これまでに誰かから急に関係を断たれた、と感じたことはありますか?」と尋ねてみました。
「あります、あります! 今はこんな感じで誰とも長続きしないけど、中学生の頃は親友がいたんです。でも、別々の高校に通うことになってからは、会うこともほとんどなくて。高校1年生の冬に、学校でちょっと辛いことがあって、親友にメールを送ってみたんですけど……メールアドレスが変わっていたみたいで連絡がつかなくって。ああ、私は関係を断たれたんだなーって、辛くて。私って、その程度の存在だったんだなーって、しばらく立ち直れなかったです」
Kさんは、親友から関係を断たれてしまったという経験に、深く傷ついていました。
急に関係を断たれる辛さを知っているからこそ、相手との関係を急にリセットする自分自身を責めてしまっていたのです。
さらにはこの経験によって、「また相手から関係を断たれてしまうかもしれない」という強い不安が刻み込まれてしまいました。
相手から関係を断たれる傷の深さを知っているからこそ、「また関係を断たれて傷つくくらいなら、自ら断ってしまおう」という心理状態に陥っていたのです。
つまりKさんの場合は、自らの意思で積極的に人間関係をリセットしたというより、過去の不安や恐怖を引き金に、相手からリセットされてしまう前に自分からリセットしていたのです。