ここでは死刑の是非については論じませんが、EUは人権思想発祥の地はヨーロッパだと胸を張って言います。私たちになじみの深い人権思想が西欧由来であることはわかりますが、20世紀を通じて、何千万人もの犠牲者を出す戦争を二度もやったのもヨーロッパです。そもそも、近代以降、世界の戦争の主役はヨーロッパで、それは、今でも続いています。
EUは、ヨーロッパ連合という統合体としてものを言うときには、胸を張って人権擁護を主張するのですが、EU加盟国のなかには、同時に、NATO(北大西洋条約機構)という軍事同盟に加わっている国がたくさんあります。
EU加盟国の多くが、NATO軍の一員として2021年までアフガニスタンで戦闘任務についていたはずです(編集部注:イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、デンマーク、スペイン、ポルトガルなど多数が参加)。駐留するNATO軍によって殺害されてしまったアフガン人には、裁判を受ける権利どころか、人権すら認められていませんでした。
戦争と死刑は別だと言うのでしょう。ただ、アフガン人がNATOに戦争をしてくれと頼んだのでしょうか。NATOがアフガニスタンに軍を派遣したのは、「9・11」という同時多発テロ事件に対するアメリカの報復に協力したためです。アフガン人がタリバンと戦ってほしいと頼んだからではありません。
しかし、アメリカによる報復は、いつの間にか、アフガニスタンを近代的で民主的な人権を守る国にするのだという話にすり替えられました。そして、20年にわたって駐留という名の占領を行い、抵抗するタリバンとの戦闘で多くの民間人を巻き添えにして命を奪ったのです。
それはNATO軍としての顔であって、EUとしての顔ではないと言うのでしょうか。しかし、西欧という世界の二つの顔であることは否定できません。
ヨーロッパの進歩思想の決定的な問題点はここにあります。自分たちの変化を進歩と信じて疑わない。非ヨーロッパ世界に対する力による支配を正当化し、非道な行為にも目をつぶってしまう。右手で握手しながら、左手では相手をひっぱたくようなものです。