日本生命は、社内の有能な若手社員に年収5000万円支払ってみたらいい。それがフェアだし、現代のビジネス環境に合っている。適応としては遅いくらいだ。社員に対しては、珍獣の中途採用よりもはるかに好ましい刺激になるはずだ。

 海外M&Aよりも、ITよりも、喫緊に不足しているのは合理的な人事システムを構想できる人材なのではないだろうか。日本生命に限らず今の日本における金融機関の経営層は、今の人事システムで偉くなった人たちなので、現状の人事システムを過剰に神聖視する傾向がある。経営の最大のボトルネックは人事にある。

「年収5000万円」を
なぜニュースにした?

 ここまで考えてみて不思議に思うのは、日本生命がなぜ今「年収5000万円の中途採用」という、金額が中途半端で、よく考えると会社の後進性が浮き彫りになるような、恥さらしな話をニュースにしたのかだ。

 会社にとって真に重要なのは、海外M&AやITで有能な人材を早急に確保することだろう。だとすると、有能な人材は個別に必死に探すべきだし、真に有能な人材なら5000万円以上出してもいいだろう。本当に価値のある人材を見つけたら、年収1億円でも採るべきなのが経営的なニーズなのではないか。

 そして、ことさらに年収に注目を集めた中途採用を行うことは、採用された人材が働きにくくなるだけなのだから、逆効果だ。

 こんな採用を行うことを手柄のつもりでいるなら、人事部のポンコツぶりは致命的だ。まして、自慢げにニュースにして流すとは、愚かにもほどがある。

 では、「年収5000万円の中途採用」という、恥さらしで逆効果なニュースを流したのが誰なのかが問題になる。

 人事部は、本当に、これが魅力的な採用で、画期的な構想だと(勘違いして)思ったのだろうか。

 あるいは「もっと偉い人」が、「当社(日本生命)の年収5000万円での中途採用は画期的だから、世間に流せ」と指示してしまって、誰も止めることができなかったのか。