社外の見物人である筆者は、広報部門の判断ミスのように思うのだが、どうなのか。年収の数字は興味を引くから、メディアは記事として取り上げてくれるだろう。しかし日本生命にとっては、つくづく恥さらしなニュースである。この際、広報の専門家も中途採用に加えるべきだろう。

上層部ほど「持ち点」が多く
人事制度改革に抵抗する

 日本生命に限らず、日本の金融機関の人事・処遇システムはすっかり耐用年数が切れている。土台が腐っているので、建て替え、建て増しではもう無理だ。

 銀行と生保において特に顕著だが、日本の金融機関では自社へのプライドと忠誠心を養うのと同時に、そこで行われる人事を本社の中枢部に囲い込んで半ば神聖なものとして祭り上げてしまった。

 そして、個々の社員は現在「人事の持ち点」を持った既得権者として層を成している。経営に影響を与えられるような上層部の社員ほど持ち点が大きいので、リセットには抵抗する。

 この構造は金融機関同士の経営統合を難しくする。待てば自分が役員になれるかという点数を持つ経営企画の担当者は、経営統合によるリセットに抵抗する。

 そして、それ以上に問題なのは、現在の人事システムが金融機関そのもののビジネス環境変化への適応を難しくしていることだ。

 常識的な人材の獲得競争を考えてみよう。例えば20代の社員であっても、エース人材とポンコツ人材を同じ給与テーブルのさじ加減で処遇できると考えることが土台からして無理だ。旧世代の価値観の押し付けでもある。

 競争上の問題だけでなく、個々の人材に対して失礼でもある。人事はもっと丁寧に行うべきものだ。若くても有能な人材に対しては、彼の能力と貢献を、上から「評価してやる」のではなく、敬い、尊重する謙虚な心が必要だ。

 そして、殊遇の問題を既存の人事システムとの関係からではなく、ビジネス環境への適応最適化の観点から考えるべきだ。

 各社いずれも、現システムを温存しながら中途採用で様子を見るのではなく、総合職の処遇を個別化・柔軟化することから着手すべきだろう。

 やがて、二流品をレンタルしなくても、社内で一流のパンダが育つに違いない。