「増税メガネ」の面目躍如か?
今必要なのは消費減税である理由
ところが、岸田政権は多くの反対や懸念の声があるにもかかわらず、適格請求書等保存方式、いわゆるインボイスの導入を強行した。これは実質的な増税であり、物価のさらなる上昇につながるものである。輸入物価の上昇以外の原因で物価がさらに上がれば、国民は困窮の度を増し、消費はさらに減退していくことになるだろう。
加えて、11月中旬からは党税調の議論も始まる。政府税調の答申の内容からすれば、「サラリーマン増税」に代表されるさまざまな増税の可能性も指摘されており、それが実現すれば、まさに「増税メガネ」の面目躍如ということにもなりかねない。
税とは、特に国税とは、国の事務事業の財源として徴収されているものではなく、景気の調整や格差の是正、特定の行為の抑制などのための、政策調整の手段として設けられ、使われているものである。別の言い方をすれば、国民経済から貨幣、お金を消すための手段である。
ある程度消さなければならないほどに景気が加熱し、需要が物価を引っ張るデマンドプルインフレの状況であれば別段、これまで述べてきたように、現下の日本経済はコストプッシュインフレに苦しみ、需要も減退傾向にあるのであるから、国民経済からお金を消すのではなく、国民経済にお金を供給しなければならない時である。
その手段として最も手っ取り早く、かつ即効性があり、国民がその効果を実感できるのは減税、特に消費税減税である。
消費税とは、一般的には社会保障の財源として理解されているようであるが、結論から言えばそうではなく、いわゆる一般財源である。もし社会保障のための財源であるというのであれば、これをプールしておく特別会計が必要であるが、それは存在していない。
そして、これまた一般的には間接税として理解されていることがまだまだ多いが、事業者を納税義務者とする直接税である。第二法人税のようなものと言ったら分かりやすいだろう。
消費税はモノやサービスの価格の一部を構成するものであり、簡単に言えば、消費税率が上がれば、その分だけ価格は上がる、つまり物価は上昇する。一方で、これを下げれば、税率を引き下げれば、物価は下がる。要するに、国が講じることができる物価の引き下げ策としては最良の手段ということである。
減税の方向性としてはいくつか考えられる。例えば、食料品価格の上昇は国民の負担を大いに増加させているのであるから、現行の軽減税率を8%から0%にするというものや、軽減税率をやめて、税率を一律8%にするというもの、さらには税率を2回の増税前の5%に引き下げるものや、それに加えて軽減税率部分を0%にするといったものが考えられる。
こうした具体策については、10月4日、自民党の責任ある積極財政を推進する議員連盟が発表した、『我が国が「明日は今日よりよくなると誰もが感じられる国」となるための総合経済対策・補正予算編成に向けての提言~真水20兆円規模の補正予算を求める~』に詳細に記載されているが、岸田首相が決断すればできるのであるから、速やかに検討を始め、具体化されることを強く望みたい。
なお、減税議論をすると必ず出てくる財源論については、先にも税は財源として徴収されているわけではないことを説明した通り、不要であろう。