もう一つ注意すべきは、韓国においても、出生率低下によって、労働力が減少していることだ。それにもかかわらず、韓国の成長率が高いのは、技術進歩率が高く、産業構造が高度化しているからだ。

 なお、以上で見た状況は、日本と韓国、台湾との間だけのことではない。日本と世界の多くの先進国の国との間で同様のことが言える。いまの状態が続けば、日本は、先進国の地位を失う可能性が強い。

アベノミクスで、日本は世界13位から27位に転落

 IMFは、世界の40の国・地域を「先進国」としている。

 アベノミクス・異次元金融緩和が始まる前の2012年には、日本は先進国の中で第13位だった。いまは第27位だから、この10年間に大きく順位を落としたことになる。いま日本は、先進国のグループから転落しかねない状態に陥っている。

 アベノミクス・異次元金融緩和が何をもたらしたかを、これほどはっきりと示しているものはない。

日本のGDPは世界13位から27位に転落、「先進国のグループから転落しかねない」『プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」』
野口 悠紀雄(著)
定価1,045円
(朝日新聞出版)

 2012年で日本より上位にあったのは、ヨーロッパの小国あるいは、北欧諸国が中心だった。

 G7諸国中で見ると、カナダ、アメリカ、日本の順だった。つまり、日本はG7の中で、上位グループにいた。一人当たりGDPで、アメリカと日本は、ほとんど差がなかった(アメリカ5万1736ドルに対して、日本4万9175ドル)。

 しかし、この10年間に、日本は、一人当たりGDPで英独仏に抜かれた。つい最近まで、イタリアが日本より下位にあった。しかし、2023年には、イタリアも日本を抜いた。つまり、いまや日本は、G7の最下位だ。

 そして、アメリカの一人当たりGDP(第8位8万9546ドル)は、日本の2.1倍になった。

 これほど大きな変化が、この10年の間に起きたのだ。

野口 悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年、東京生まれ。63年、東京大学工学部卒業。64年、大蔵省入省。72年、エール大学でPh.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。専攻は日本経済論。近著に『日本が先進国から脱落する日』(プレジデント社、岡倉天心賞)、『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』(日経プレミアシリーズ)、『2040年の日本』(幻冬舎新書)、『超「超」勉強法』(プレジデント社)、『日銀の責任』(PHP新書)ほか多数。
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AERA dot.より転載