言葉をつくるプロセスで重視すること

佐宗 「質問責任」という言語化は役員の方々で議論して行ったんですか? それとも青野さんの中で言語化して、みなさんに相談されたんですか? どんなプロセスでつくられたのかが気になります。

青野 壁打ち相手になってもらっていたのは、当時副社長だった山田理さんですね。彼と話しながら考えてきました。でも、メンバーにも広く相談してもいましたね。サイボウズ社内のグループウェアに僕が思いついたことをポンと書いて投稿すると、いろんな人がコメントをくれました。

僕が新しい言葉をつくろうとしたり、来期の方針を考えたりしているとき、自分のなかに違和感があるのにそれを口にしないと、その人は質問責任を果たしていないことになりますからね。「これってどうだろう?」と僕が呟くと、みんながそれに呼応してくれてどんどん磨きがかかっていきました。そうやってつくった言葉のなかでも、いまいちだったものは消えていくので、よりいっそう共通言語化が進んできました。

佐宗 グループウェアの会社で、情報共有を大事にするという発想が根底にあるからこそ成り立つプロセスだったのかなと感じました。他社が同じようなことを実践するためには、どんなことを意識するといいんでしょうね?

青野 いろいろあるとは思うのですが、1つ言えるのは「なんでもグループウェアに上げればいいわけではない」ということですかね。もちろん、上げないよりは上げたほうがいいんですが、出し方によっては、周りが「なんだ、この人…?」と引くだけで終わってしまったり、炎上して社内で喧嘩が始まったり、いい提案なのに建設的な議論が進まなかったりする。情報は「出し方」が大事だなと感じています。

これに関しては、サイボウズでは「問題解決メソッド」として言語化しています。たとえば、「あのチームはスキルがない」と書くのは、事実ではありません。スキルがゼロってことはないはずですから、発信者の意見が入っています。このように、「事実」と「解釈」を分けないまま発信してしまうと、議論が噛み合わず、結論だけ急ぐような会話になります。建設的に議論するために、事実と解釈を分け、現実と理想を分け、原因と課題を分ける。これで、情報を共有するためのインフラとしての共通言語をつくっていったようなことがあります。

佐宗 それはコンサルなどでのトレーニング法としても有名ですよね。そういった伝え方を知っている人が世の中に増えれば、建設的な話し合いが増えるだろうなと感じました。

職場の「質問しない文化」を変えるたった1つの言葉

(第3回に続く)