その場合、どんな曲を選び、どう練習すればいいのか。先の例と同じく、週1回30分程度のレッスンを受けたと仮定する。

「この場合のピアノ演奏とは、先ほどの例に挙げた『友人の結婚式』といった一時的なものではなく、ある程度のピアノ技量を高めた状態でピアノを人前で披露するという域になりますよね。

 というのもバーでいつも同じ曲、一曲しか弾けないというのは、ちょっとカッコ悪いでしょうなので、そんな目標を持つ方こそ、もっと長い期間かけてピアノを習得して欲しいです。もっとも習得といってもいろいろレベル云々の話はあります。
 
 さりげなく音楽が好きな人の前で演奏して聞かせることができる。それはもうピアニストと呼んでもよいのではないでしょうか」

肝心の楽器をどうするか?
まず買うべきピアノとは

「大人ピアノ」が密かなブーム、初心者でも様になる練習法を現役ピアニストが伝授記者の拙い質問にも、真摯に応える。その表情から防音室内は緊張感溢れるピリピリとした空気感が伝わってくる。
(写真提供/えんつミュージックスクール)

 さて、大人、子どもを問わず、いざピアノを始めようというとき、気になるのが肝心の楽器をどうするかだ。最近では、まず電子ピアノを購入、それから、いわゆる「生ピアノ」と呼ばれるアコースティックピアノへ。それも最初はアップライトピアノ、そしてグランドピアノへと進んでいくというのが定番だという。はたして大人の場合もそうか。またアコースティックピアノがなければピアノの演奏技量習得は難しいものなのだろうか。

「極論を言えば、アコースティックピアノがないと習得は無理ということはありません。しかし、どのレベルまで上達したいかによって変わります。音を鳴らすことだけを考えると電子ピアノでも、アコースティックピアノと変わらず弾けるでしょう。ただ、その先の微妙なニュアンスや音色のことを考えたらどうでしょうか。

 そうすると、やはり電子ピアノでは役不足です。アコースティックピアノ、それもアップライトよりもグランドピアノが望ましいところです。ピアノを弾くうえで重要なことはやはり鍵盤のタッチ。キーボードはピアノとはタッチ感がまったく違います。なので最低でも電子ピアノの購入をお勧めしていますね」