現場の自衛隊員から見てマスコミはどう見えるか

 もし自衛隊員が射撃場周辺の住民などに対して中指を立てたのなら、広く報じなくてはいけないだろう。国民の生命・財産を守ってくれるはずの人たちが、国民に敵意をむき出しにしているとしたら、大きな問題だ。

 が、その敵意が「マスコミだけ」に向けられたとなれば話は別だ。人命が無残に奪われるような悲劇が起きた現場に押し寄せるマスコミは、被害者の家族や友人知人などの関係者から「敵意」を向けられるのが当然だからだ。

 筆者自身もテレビ、新聞、週刊誌とメディアの仕事を27年間やってきて、人命が奪われた事故・事件の現場に嫌になるほど赴いたが、中指立てられるくらいならかわいいもので、水をかけられたり、包丁で追いかけ回されたりしたこともある。ある大きな事故で亡くなった被害者の葬儀場前で、出棺時に遺影を撮影しようと待ち構えていたら、関係者たちに石を投げられたこともある。

 マスコミとは「事件・事故の関係者から敵意を向けられる仕事」なのだ。

 今回、この射撃場にマスコミが押しかけていたのは、今年6月、この地で陸上自衛隊の3人が死傷するという銃撃事件が起きて以降、5カ月ぶりに射撃訓練が再開されたからだ。

 そこで想像をしていただきたい。目の前で仲間の命が奪われた自衛隊員たちが5カ月ぶりに悲劇の現場を訪れた時、そこにテレビカメラがずらりと待ち構えていたら彼らはどう思うだろうか。

「いい気分はしないが、国民の皆さんにご心配をかけたのだからしょうがない。マスコミのみなさん、ご苦労様です」と思うのが、世間一般が求める模範的な自衛隊員の発想だろう。

  ただ、あれだけの巨大組織なのでさまざまな考えの人がいる。中には、血気盛んな若者もいるので、「ふざけんなよ、このマスゴミが」とこっそりと中指を立てるような者もいるというのは容易に想像できよう。

 しかも、もっと言ってしまえば、マスコミは自衛隊員、特に今回の守山駐屯地の人々に中指を立てられても仕方がないような「偏向報道」をしている。