「どれ、ワークマンは……」と早速おじさんらしい上から吟味の視線で店内を眺め渡すと、想像よりカジュアルな商品が多く、少し心が踊った。そして値札を見て興奮した。もこもこのダウンジャケットが3900円などの異次元の値を示している。これは何事かと思いつつ、しかし「安かろう悪かろう」という言葉もあるからそこに急に飛びつくことはせず、その日はペラッとしたジャケットとパンツそれぞれ1900円を買って帰った。
謎の保温性を発揮した
薄いジャケットの秘密
翌日、日中暖かく感じて過ごしていた筆者とは対照的に、妻がずっと寒いと言っていた。風邪を疑っていたところ、やがて娘まで寒いと言い出して、「実際に気温が低いのかもしれない。しかし筆者だけ寒がらないのは珍しい」と思い、気づいた。筆者は前日に買ったワークマンの薄手のジャケットを1枚羽織っていて、これの防寒効果が優れていたのではあるまいか。裏地が、近年のワークマンを代表するアイディア商品のひとつらしいのだが、アルミになっている。
寒がりに起因する着ぶくれで毎年妻(と娘)に嫌がられ、侮られてきた筆者だったが、今年はワークマンとともに過ごせばもう着ぶくれせず、冬と妻と娘に革命的な逆襲をなしえるかもしれない……! 筆者がワークマンファンとなった瞬間であった。
あまりブランドに詳しくないのだが、中年になってビラボン(BILLABONG)を知り、愛用するようになった。元はサーフィン関連のウェアがメインのブランドだが、カジュアルで洒落たアイテムも多い。高級というほどでもないが安すぎもせず、そういった意味でも丁度よく、着た感じがとにかく格好良く仕上がるところが気に入っていた。「とりあえずビラボンさえ着ておけば怖くない」という安全神話的な信頼を、筆者はビラボンに寄せていた。
そして自分がビラボンを着るようになって、休日盛り場ですれ違う私服おじさんたちのビラボン着用率の高さに気づき、驚いた。「あっあの人はビラボン、あっこの人もビラボン!」という具合である。都会はもう少し様子が違うはずだが、少なくとも千葉県などの地方近郊の現状はそれである。