新・理系エリート#7Photo:imagenavi/gettyimages

対人コミュニケ―ションに不安があっても、学力さえあれば大学までは上り詰めることができる。しかし、就職となると話は別。人付き合いが苦手な“陰キャ”の高学歴エリートが、日本の企業で能力を発揮できる環境、満足な待遇を手に入れるには?特集『新・理系エリート』(全59回)の#7では、周囲との人間関係を築くのが苦手な高学歴エリートが、幸せな就職をかなえるためには文系、理系どちらに進むべきかジャッジした。(ダイヤモンド編集部 野村聖子)

「陰キャは理系に進むべし」
俗説は間違いか否か

 勉強はできるが、周囲と円滑な人間関係を築くのが苦手。大学まではエリート街道を歩んでいたのに、就職先でうまく適応できない――。

 高学歴だが対人コミュニケーションに不安がある若者にとって、学力があれば上り詰めることができる受験の世界とは異なり、就職は大きな壁だ。ちまたではよく「理系の職種の方が人と接する機会が少ないから、“陰キャ(陰気なキャラクター)”は理系に進む方がよい」と言われたりもする。しかし理系の職種であっても、企業では当然、大人数から成るチーム単位でプロジェクトを動かす。

 では研究者の道にといっても、アカデミアで上を目指すのも昨今はチームによる研究が基本。「スタンドプレーで成果を出すのは難しく、最低限のコミュニケーションスキルは必要になる」と東京大学理工連携キャリア支援室の山田篤氏と田中雅人氏は言う。

 両氏は東京大の理学部・工学部の学生を対象に就職支援を行っている。対話などに苦手意識のある学生に対しては、模擬面接やディスカッションなどでの指導を何度も繰り返すという。

 苦手の範疇であればこれらの訓練で改善できる可能性はあるものの、それが脳の持つ特性である場合、克服するのはどうにも難しい。その代表例が「発達障害」である。発達障害の場合、無理に環境に適応しようとすると、うつ病や適応障害などを発症してしまう恐れがある。

 単なる陰キャではなく、脳の特性で対人コミュニケーションが苦手なまま克服できない場合、高学歴で学力は高くても、社会人としてのエリート街道は諦めなければならないのか。

 確かにこれまでの日本の企業文化では、このような人材が高待遇を得るのは難しかった。しかし、少しずつではあるが、極端に苦手な分野があっても特定の能力が高い、いわば“とがった”人材を生かそうとする動きが見られる。そして、彼らにマッチするといわれる職種を見ると、前述した「陰キャは理系に進むべし」という俗説は、あながち間違いではなさそうなのだ。