日本の一般的な昇進ルートでは
発達障害で高待遇を得るのは難しい
発達障害治療の第一人者で昭和大学医学部主任教授、同大学附属烏山病院病院長の岩波明医師の元には、高学歴の患者も多く訪れる。彼らに「日本における一般的な“昇進”のルートを歩ませようとするとつまずきやすい」(岩波医師)という。
ADHD(注意欠如・多動性障害)、またアスペルガー症候群を含むASD(自閉症スぺクトラム障害)など、一口に発達障害と言っても幾つか種類がある。よくある傾向の一つは「ずばぬけた集中力(過集中)」。この特性によって職場で大きな成果を出し「幹部候補として昇進ルートに乗る患者は多い」(岩波医師)。
企業で幹部社員に昇進するためには、何らかのプロジェクトで大人数をまとめ上げる調整役として成果を求められることがほとんどだ。多くの関係者の間に入って異なる意見や主張の擦り合わせを行い、適度な落としどころを見つける、これが調整役の主たるミッションだが、発達障害の患者は集中力に優れる一方、マルチタスクが苦手だ。
また、場の空気や言葉の行間を読めないというコミュニーション上の特性を併せ持つ傾向にあり、調整役は過大なストレスになる。だから、それまで順風満帆にキャリアを積んでいても管理職目前でつまずいてしまう。日本企業で昇進、昇給をかなえる道がこの調整役を経るルートの一本道で「ほぼ他の手段は存在しないように思える」(岩波医師)。
しかし、人手不足を背景に近年、発達障害の特性を逆に強みとして企業の第一線で活躍してもらう「ニューロダイバーシティ」という概念を経済産業省が提唱し始めている。そんな中で実際に企業のニーズと結び付ける事業を行っているのが、人材大手パーソルホールディングス傘下のパーソルダイバースだ。