発達障害の特性が強みになるIT分野
空前の人手不足も後押し

 パーソルダイバースの人材マッチング事業「ニューロダイブ」は、もともと対人コミュニケーションが苦手な大学生をサポートする事業から生まれたという。当時から「難関大学の学生からの相談は多かった」とパーソルダイバースの大濱徹氏は振り返る。

 ニューロダイブでは、データサイエンスやAI開発などの先端IT分野に絞ってマッチングを行っている。これまでの各種先行研究により、発達障害の特性を強みとする上で最適の職種がIT分野(下図参照)だったからだ。

 ただ事業の発足から日が浅いこともあり、実際に採用されたケースの待遇を見ると、現状では一般採用よりも専門人材を安く雇用できるという目的で企業側に都合よく使われてしまっている側面は否めない。

 とはいえ、IT分野は世界的に専門人材が不足し、国内でも2030年に最大で79万人が不足すると推計されている。海外ではすでに米マイクロソフトや独SAPなどの大手企業が、発達障害の技術者を高度なIT専門職として採用し、革新的なアプリケーションの開発などにつなげている実績がある。日本ではまだまだ萌芽の段階とはいえ、ニューロダイバーシティは発達障害の特性との親和性、および企業のニーズによってIT分野を中心に進んでいくことは確実だろう。

 頭はいいが、極度に周囲との人間関係を築くのが苦手な子供を文系理系のどちらに進ませるべきか。もちろん子供の希望第一だが、学歴や能力に見合った待遇や環境を得ることを最優先にするならば、他の分野よりもIT分野を目指す方が幸福度は高くなりそうだ。従って「理系に進ませた方がよい」というのが結論となる。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Kanako Onda,Graphic by Kaoru Kurata