仕事のデキない人が「たたき台」をつくる時に忘れている5つのことPhoto:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。今回取り上げるのは、本当は重要なのに意外と軽視されがちな「たたき台」の作り方を学べる一冊です。

「たたき台」は
「アタマを借りる」ためのもの

 私はかつて、就活生に向けた会社説明会でプレゼンをしたことがある。各部門のリーダーが、入社後にどんな仕事をするのかを紹介するもので、編集者の仕事について10分程度話したのを覚えている(現職ではなく、前の会社での話だが)。

 そのとき、就活生に向かって「自分がよく知らない分野の記事を載せなくてはいけないときにどうするか」と問いかけた。一人の学生が「ネットだけじゃなくて、実際に図書館などに行って徹底的に調べて書く」といった答えを返してきた。

 それも間違いではないが、私が用意していた答えはこうだ。「その分野のことをよく知っている人を連れてくる」。つまり、専門家を探してきてアポイントをとってインタビューするか、なんなら記事執筆を依頼すればいい。

 もちろん自分でも調べるのは大前提だ。そうでなければインタビューで質問もできないし、記事の編集や校閲もできない。ただ、それにプラスして「他人の力をうまく使う」ことが成果につながるのだ。

 伝えたかったのは、自分だけでなんとかしようとするのではなく、他人の力を借りて、より良いものを作ろうとする心構えの大切さだ。誰が書こうが、誰に情報を提供してもらおうが、結果的に「良い記事」ができればいいというわけだ。

 今回の書評では、そうした「他人の力をうまく使う」上で必要なノウハウがまとめられている書籍を紹介する。

 その本とは『仕事がデキる人のたたき台のキホン』(アルク/田中 志〈のぞみ〉著)である。本書のテーマである「たたき台」は、周囲とうまく協力しながらアイデアを練り上げる際に不可欠なものだ。

 著者の田中氏は、コンサルティング大手のボストンコンサルティンググループ(BCG)出身。その後、新規事業のコンサルなどを手掛ける「Cobe Associe」を創業し、代表を務めている。

 なお田中氏は本書で、たたき台を通じて多くの人から意見や知恵を引き出すことを「アタマを借りる」と表現している。同氏がコンサル業界で培ってきた、多くの人のアタマを借りるための「良いたたき台」の作り方とは――。