「自分で自分に『自信』をつけさせる方法を教えましょう」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)
自分で自分を納得させよう
「理性的な私」が「感情的な私」を乗りこなすためには、あるものが必要です。
それが、「自信」です。
世の中「自信」を持って生きている人は少ないように思えます。
「もっと美しく生まれたかった」
「もっとお金持ちならよかった」
「普通に生まれたかった」
頭のなかでは、今さら自分は変われないとわかっているけど、心では「そんな変われない自分がイヤ!」と自分のことを嫌ってしまう。
そんな理性と感情のミゾが大きい人ほど、「なんとなく不安」という感覚をつねに感じてしまっているのです。
このジレンマを解決して、自分で自分を納得させましょう。
「あなた」ではなく「先入観」のせい
アメリカの精神医学において、何事かに納得して腑に落ちるには、「認知」「感情」「行動」のトライアングルを回すことが大切だ、と述べられています。
先入観があって、頭の中に勝手に生まれてしまう「嫌だ」とか「苦手だ」といった感情によって、チャンスを逃してしまったり、誤った選択をしてしまう……。
そんな考え方のクセを解消させて、合理的にラクに生きられるようにするという方法です。
たとえば、あなたの会社でとても大きなプロジェクトがあって、「やってみたい!」と思ったとしましょう。
しかし、「失敗したら周りに迷惑をかけてしまうかもしれない」「前と同じように失敗してしまうかもしれない」という失敗を前提とした先入観が生まれると、二の足を踏んでしまうと思います。
そうやってモジモジしているうちに他の同期にチャンスを取られてしまって、「自分はなんてダメなんだろう」と自信をまたなくしてしまう。
そんな負のサイクルから抜け出せなくなっている人もいると思います。
ここで、「自信が持てない自分はなんてダメなやつなんだ」と責めてしまうと、「メンヘラな状態」になったままです。
少し視野が狭まっていて、問題の本質が見えにくくなっています。
なぜなら、今回のあなたの失敗の原因は、「自信がない自分」ではなく、勝手に「失敗をしてしまうかもしれない」と思い込ませた先入観にこそあるからです。
「心の悪い声」を止めよう
自信というものは、成功体験を繰り返していれば誰でも持てるようになるものです。
自信はふわふわとした概念で、その場のノリや雰囲気に左右されやすいものです。
一人では自信が持てなくても、友人に励まされたり、昨日見た映画の主人公に自分を重ねたりと、些細なきっかけによって自信は大きくなったり、小さくなったりします。
ようは私たちがよく言う「テンション」というものが、「自信そのもの」とも言えるのです。
一人ではいたずらもできない子どもが、友達に囲まれたら急に大事件を起こしてしまうように、集団心理やさまざまな外的要因によって、自信は風船のように大きくなったり、小さくなったりするのです。
それに対して、先入観というやつは、目立たないくせにせっかく膨らませた自信の風船を一突きでしぼませる「針」のような鋭さを持っています。
頑張って自信を膨らませようとしても、「でも、どうせ失敗する」「恥ずかしくないの?」という心の悪い声が穴を開けてしまい、風船がしぼんでしまいます。
悪循環になっているのに問題の本質が見えていないせいで、穴の開いた風船を膨らませようとして、自信がなかなか大きくなってくれないのです。
では、ここで針を取り除いてあげたらどうなるでしょう。
はじめはなかなか膨らみませんが、時間をかけて穴を塞ぎ、緩やかに膨らませることで、どんどん自信が大きくなります。
過去の失敗や、思い込み、こだわりといった、人生においてあなたに不利益を与えるような針を取り除き、ストンとハラ落ちした状態になることを「トータル・コンビクション(total conviction)」と言ったりします。
「ハラ落ちする体験」をすると、人は納得感を得たり、実感を伴います。若い人が口にする「エモい」という表現にも近いでしょう。
ステップに沿ってやっていこう
たとえば「お金に困っている」という人の例で考えてみると、
ステップ1「認知」:ムダな買い物が多いことに気づく
ステップ2「感情」:節約することで生じる感情を整理する
ステップ3「行動」:できそうな節約法から始めてみる
ステップ4「廻転」:失敗しても続けてみる
文章にすると、これだけにまとまってしまうくらいにシンプルなステップで自信はついていきます。
このステップは、「失敗こそ奇貨(大きな利益)」という考え方でできています。
失敗は「すればするほどいい効果が出ている」という発想で、このステップを作ったので、うまくできないというのは逆に成長の証なのです。
失敗を恐れるあまり一歩踏み出せない人に、「失敗するなよ?」とプレッシャーをかけても何も生まれません。
「なんだこんなものか」と思うかもしれませんが、やってみるとその効果をみるみる実感するでしょう。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』より一部を抜粋・編集したものです)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。