日本が経済成長したのはなぜか?
その理由を履き違えている

 ロマン派の皆さんの基本的な考え方は、「失われた30年」の前、高度経済成長期からバブル景気くらいまでの日本が元気だったのは、東京五輪や大阪万博をきっかけに、日本経済が発展したから――という認識に基づいている。ただ、実はそれは「誤解」だ。

 日本が元気だったのは、「日本人が爆発的に増えた」からに尽きる。今、日本の元気がないのは人口が激減しているからだ。

「大阪万博で日本を元気に」という考え方は、このような「現実」から目を逸らすことにしかならず、結果としてさらに日本の元気を奪う。だから、改めた方がいいというのが筆者の考えだ。

 と聞くと、「貴様!日本の奇跡の経済発展を成し遂げた先人を愚弄するつもりか!」「この低脳ライターめ、中学校の歴史の授業からやり直せ!」と怒りでどうにかなってしまう人もいるだろう。

 東京五輪のメダルラッシュの活躍を見たり、世界中の人々が五輪や万博に集う様子を見て、「日本の明るい未来」を確信して、日本国民がひとつになって頑張ることで、ソニーやホンダのような世界的企業が育って、「焼け野原から世界第2位の経済大国へ」という奇跡の復活を果たしました――。

 そんなサクセスストーリーは学校の教科書でも説明されている、日本の社会人としても「常識」だ。ただ、実は残念ながらこのストーリーは、日本国民が国や社会に誇りをもちやすい、物事が単純で受け入れやすいなどの理由で後付けで的につくられた「神話」に過ぎず、根拠やデータの裏付けのある話ではない。

 ゴールドマン・サックスのアナリストなどとして30年以上、日本経済を分析してきたデービッド・アトキンソン氏が以下のように指摘しているように、「経済分析のプロ」から見れば、日本の戦後の経済成長で大きな要因となったのは、爆発的な人口増という方が「常識」なのだ。

《そもそも戦後の日本の経済成長のほとんどは、実は人口ボーナスの恩恵がもたらしたものだった。日本の人口は終戦時の1945年に7200万人だったものが、1990年には1億2361万人まで爆増した。その間、特に生産年齢人口、つまり若者の人口の増加が顕著だった。人口が増えれば生産力も増すし、消費力も増す。それが日本の経済成長の主たる原動力だった》(ビデオニュースドットコム、11月25日)

 実際、日本のGDP(国内総生産)は1966年にフランス、1967年にイギリスを抜いた。当時のマスコミや評論家は「東京五輪を契機に日本の技術力が進歩して、イギリスやフランスを抜いた」と大喜びしたが、実はこのタイミングで抜いたのは両国の人口だった。