2023年決定版 インフレ時代の「負けない」マンション売買・管理#9Photo:PIXTA

急速に普及が進む、管理組合の理事会業務を全て管理会社などに外部委託できる新しい管理方式「第三者管理」。採用する管理組合と事業参入する管理会社が増えているが、さまざまなトラブルも発生。国土交通省もガイドライン制定に動いている。特集『2023年決定版 インフレ時代の「負けない」マンション売買・管理』(全24回)の#9では、その課題と今後について詳しく見ていこう。期待の「令和の新管理方式」は果たしてうまくいくのだろうか。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

三井不動産は新築物件の営業ツールに
大手管理会社で導入進む第三者管理

「負担は少なく、ココロはかるくおもいっきり休日をまんきつします」

「理事会の議題検討や運営を第三者に委託できる仕組みを始めました。管理のことはプロに任せて、休みの日は好きな時間を好きなだけお過ごしください」

 三井不動産の複数の新築マンション物件のホームページに、最近このような文言と、犬をなでながらリビングでくつろぐ男性のイラストが躍るページが加わった。「第三者管理方式」の案内ページだ。

 第三者管理方式とは、一口に言えば「管理組合の理事会業務を外部に丸投げできる」もの。区分所有者がいわば「経営者」としてマンション管理に関わる理事会方式に対して、経営は外部専門家に任せて「株主」に徹することができるのが第三者管理方式だ。

 マンションを購入した全員が組合員となって管理組合を結成する。その中から、総会で選出され、組合員を代表して管理の意思決定を行うのが理事会で、その代表が「管理者」である理事長だ。監事がその仕事を監視・監督。理事会の決定と運営方針は毎年の管理組合総会で組合員が票を投じて意思決定する。これが今までの理事会方式だ。

 これに対して第三者管理方式は、外部の管理会社などに理事長役を代行して管理者となる担当者を置き、その担当者が管理計画に基づいて、日常管理を管理会社に、大規模修繕を工事会社にそれぞれ発注する。理事会と同様、監事が監視・監督を行うほか、管理計画は管理組合総会で議論・承認のプロセスを踏むというものである。

 長く日本のマンション管理で続けられてきた理事会方式。だがこれは、億円単位の巨額の資金を元に建物の補修工事を差配したり、多ければ1000を超える世帯をまとめてなんらかの合意形成に導いたりと、かなりの負担を理事に押しつけることになる。業務はたいてい休日や夜間などを充てることになるし、ほとんどの場合は無給のボランティアだ。

 理事会活動自体に参加したくない――。そう考える区分所有者は実際多いという。

 大和ライフネクストが契約中の管理組合を対象に取ったアンケートによると、「理事会業務を外部委託すること」に対して約7割が肯定的な回答を寄せたという。三井不動産が分譲したある第三者管理方式のマンションの購入者を対象にしたアンケートでは、「第三者管理方式が購入理由になった」と回答した人が4割もいた。冒頭の三井不動産のように、第三者管理方式が新築マンションの「営業ツール」として機能する状況がすでにある。

 三井不動産に限らず、第三者管理事業に参入する管理会社は増えているし、今後第三者管理方式に移行する管理組合も増えるだろう。ただ、導入されたマンションでは大小のトラブルも発生しているようだ。普及が進む中、国土交通省もガイドラインの制定に動き始めた。戦後長くマンション管理方式のスタンダードだった理事会方式は、今後この第三者管理方式に取って代わられることになるのだろうか。次ページから見ていこう。