日本市場の規模感の中でVertical SaaSビジネスを展開する場合、利益創出には複数のマネタイズポイントを持つことが大切だと弊社では考えています。特に、スタートアップのIPO時に売上ベースのPSRマルチプルではなく、利益ベースのPERマルチプルが重要視されている今はなおさらです。
端的に〇〇を説明するのであれば、ARPA(Average Revenue Per Account、1アカウントあたりの平均売上額)を上げる新たなマネタイズポイントです。しかし、実際の〇〇の設計は多種多様で、ビジネスごとにどうSaaSとシナジーを創出させるか試行錯誤が必要です。〇〇がSaaSの営業のドアノックツールとなることもあれば、逆にSaaSが〇〇のドアノックツールになることもあります。〇〇がSaaS導入後のCS(カスタマーサクセス)の要となることもあるでしょう。
例えば、弊社の投資先で言うと、歯科医療DX SaaSを提供するDeltanが良い事例です。Deltanの場合はSaaSを起点として、今後幅広い〇〇、つまり歯科医療事業者向けサービスを展開していく予定です。
2023年のスタートアップシーンや投資環境はどのように変化すると予想しますか。
2020年、2021年に比べると、スタートアップにとってもVCにとっても厳しい資金調達環境が継続すると予想しています。だからこそ、利益創出までの道筋が明確なビジネスモデルに注目が集まり、Vertical SaaS×〇〇のようなコンセプトが注視されると予想しています。
2023年に注目する・盛り上がると考える領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。
Partners Fundが2023年に注目しているキーワードは「サステナビリティ」です。EUではサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)に基づく開示義務が2023年にさらに強まります。機関投資家を巻き込んだこの開示義務の強化の流れは、不可逆的に日本にも浸透していくと考えています(例、人的資本情報の開示)。
スタートアップは、本質的に社会のサステナビリティに貢献するものがほとんどです。健康と福祉、ジェンダー平等、クリーンエネルギー、つくる責任・つかう責任、持続可能な一次産業等、SDGsのテーマの多くはスタートアップの取り組む事業に当てはまります。
その中でも特にサステナビリティへのインパクトが大きいと同時に、高い成長率を実現できるビジネスを起業家と一緒につくっていくことが弊社の目標の1つです。この目標に沿って、リユース・リサイクル業務を自動化するSaaS「Smapra」を展開するリスマ、人的資本投資に寄与する1on1管理SaaS×コーチングサービス「Talent Amp」を提供するvillio、在宅医療プラットフォームを展開するオンコール等に2号ファンドから投資してきました。