メルカリに入社後、まずは資金調達の交渉とテレビCMの制作を同時並行で進めていきつつ、「テレビCMを放送したら現状のカスタマーサポート(CS)では対応しきれなくなる」と思っていたので、CS仙台オフィスの立ち上げもやっていきました。

メルカリのグロースの変遷 出典:メルカリ
メルカリのグロースの変遷 出典:メルカリ

それに加えて、メルカリはプロダクト開発をする会社から、きちんと事業を伸ばしていく会社に移行していくフェーズにありました。そのためには評価制度やロードマップを策定しなければならないですし、優秀な人材を採用していくためには会社の志や夢、実現したい世界などを示していかなければいけません。今後会社を大きく成長させていくためにはミッション・ビジョン・バリュー(MVV)があるべきだと思い、その策定も進めていきました。

入社から3カ月間はこれらの事柄に全力で取り組み、やりきったという感じです。結果的に2014年3月末に14.5億円の資金調達を実行し、ゴールデンウィーク明けにはテレビCMを開始し、そこから一気にサービスを伸ばしていくことができました。

当時を振り返ってみると、「テレビCMは絶対成功する」という前提のもとで動いていたので、結果的にはそれが良かったんだと思います。これは今だからこそ言える話ですが、当時はまだスタートアップやスマホアプリに対する信用が低かったこともあり、メルカリのテレビCMは一度、考査(広告主のサービス内容とCM表現が民放連の放送基準に抵触していないかを確認する作業のこと)に引っかかってしまったんです。

 

──CM考査に落ちてしまった、と。

「メルカリ!」という音の高さやスピードなど、かなり細かい部分にまでこだわってCMは制作していたのですが、広告代理店から「考査に落ちてしまいました。このままだとACジャパンのCMが流れることになります」と言われて。このCMには、数億円規模の資金を投じていたので、CMが流れないことになったら、まずいことになると思いました。

それで自分は大和証券SMBC(現:大和証券)でIT企業のIPO(新規株式公開)を担当していた経験から、すぐに東京証券取引所に提出する上場審査資料のフォーマットをもとに、メルカリの企業情報を書いて、提出すればいいのではないかと考えたんです。

そこから3日間くらいは、その資料の作成に時間を費やしました。さまざまな情報を記載していく中で、結果的に重要な役割を果たしてくれたのがCS仙台オフィスの存在でした。100人規模のカスタマーサポートの拠点があるなら大丈夫だろう、ということで考査を通り、何とかゴールデンウィーク明けにテレビCMを開始することができたんです。「CMは絶対成功する」という前提のもとで動いていたからこそ、今のメルカリがあるのかなと思います。